平昌五輪で南北朝鮮の融和ムードが演出される中でも、北朝鮮国営メディアの対日批判ぶりは相変わらずだ。国際政治学者の三浦瑠麗氏が指摘した潜伏工作員「スリーパーセル」の話題を念頭に、安倍政権が「国際政治学者ミウラをはじめ保守専門家ら」を使って世論を誘導しているなどと独自の主張を展開している。
この「スリーパーセル」の話題はテレビ番組で出たものだが、大手紙は紙媒体では記事化せず、主に各種ニュースサイトが配信した記事をきっかけに話題になっていた。北朝鮮は情報番組や、こういったニュースサイトも情報収集の対象にしているということになる。
安倍政権が保守専門家使って世論操作??
「スリーパーセル」の話題は、三浦氏が2018年2月11日放送の情報番組「ワイドナショー」(フジテレビ系)で言及。この議論の妥当性をめぐり賛否両論が噴出したが、ついに「本家」が参戦した。朝鮮中央通信が2月26日に「『脅威』をもたらす張本人は果たして誰か」と題して配信した論評記事では、北朝鮮の弾道ミサイルに備えて日本全国の学校が危機管理マニュアルを作成する際の、手引き書改定案を文科省が発表したことに触れながら、
「そうかとすれば、安倍一味は国際政治学者ミウラをはじめ保守専門家らを推し立てて北朝鮮の『暗殺部隊』が東京や大阪に隠れているかも知れない、朝米間に戦争が起きる場合、日本の大都市がこのようなテロの目標になるという世論を流すと共に、反総聯(朝鮮総聯)弾圧(編注:「総聯弾圧」の誤りだとみられる)をよりヒステリックに強行している」
と主張。「国際政治学者ミウラ」「暗殺部隊」は、それぞれ三浦氏とスリーパーセルのことを指しているのは明らかで、安倍政権が三浦氏らを利用して世論操作していると主張したわけだ。
発砲事件にも素早く声明
上記の記事にも名前が挙がる在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)をめぐる動きには、特に神経質になっているようだ。2月23日未明には、総連中央本部に男2人が車で乗り付け、鉄製の門扉に向けて数発を発砲。男はその場で建造物損壊容疑で現行犯逮捕された。
早くも2月25日には、北朝鮮アジア太平洋平和委員会が国営メディアを通じて非難声明を発表。事件について、
「単に偶発的な事件ではなく、日本の反動層が朝鮮半島の情勢を極度に緊張させ、これを機会にして軍国主義復活と『大東亜共栄圏』の昔の妄想を実現しようとする陰険な企図の下で朝鮮と総聯を相手に強行された故意の政治的挑発であり、極悪非道な犯罪」
だとした。さらに、日本政府が右翼に武器を供与して犯行を行わせたとする独自の主張まで展開した。
「日本当局がいつまでも遂げられない妄想を実現しようと狂奔したあげく、右翼ごろつきに武器まで与えて総聯中央会館に射撃をした」