「なんか、見てて辛いわ・・・」――。平昌五輪の日本代表団・帰国時記者会見に出席したスキージャンプの葛西紀明選手に対し、こんな同情するような声が漏れている。
五輪開会式で旗手をつとめた葛西選手だが、会見に出席した選手で唯一人、メダルを首にかけていなかった。
「僕のおかげでこんなにたくさんのメダリストが生まれたんじゃないかなと」
日本選手団は2018年2月26日に帰国時記者会見に臨み、主将のスピードスケート・小平奈緒選手と旗手の葛西選手、そしてメダリストの総勢16人が一堂に会した。
葛西選手は今大会、個人ノーマルヒル21位、同ラージヒル33位、団体は6位と、メダルに手が届かなかった。司会者がはじめにこの会見について「帰国記者会見」に加え「メダリスト会見」と述べたこともあって、テレビ越しに中継の模様を見ていたインターネットユーザーからは「この場に来てもつらいやろ葛西」「気の毒」「なんか、見てて辛いわ・・・」といった声が漏れることになった。
冒頭あいさつで葛西選手は「旗手をつとめた葛西紀明です。今回メダルを取ることはできませんでしたが、8度目の五輪という誰しもがなしえない記録を作ることができ、本当に嬉しく思っております」と、悔しさをにじませつつ、初出場アルベールビル五輪(1992年)から続く記録に誇りを見せた。
ただ、次の一言が視聴者の心をいっそう複雑にさせた。
「旗手という大役をやらせていただいて、力強く旗を振れて、僕のおかげでこんなにたくさんのメダリストが生まれたんじゃないかなと思っています」
苦笑いする葛西選手。その様子をテレビ越しに見ていたインターネットユーザーからは掲示板に
「笑えねえっつのw」
「笑いを取りに行ったのに ダダスベリじゃねえか」
「えっ笑うとこじゃないのかな 滑った?」
「あああ・・・葛西いまのスベリはまずい気がするぞ・・」
「これ冗談のつもりで言ってるのに笑いが起きてないとかなんじゃねえの」
といった書き込みが続々となされていた。
4年後を見据える
前回ソチ五輪では当時41歳ながら個人ノーマルヒルで銀メダル、団体で銅メダルを獲得した「レジェンド」の葛西選手。続けて、「本当にメダリストのみなさんは努力して、どんな困難にも打ち勝って、勝ち取ったメダルだと思っています。心から祝福したいと思っています。おめでとうございます」とメダルの重みを誰よりも感じているようだった。その上で、
「メダルを取ったみなさんのパワーを背負って、次の4年後、北京五輪でメダルを取りたいという強い気持ちになったので、まだまだこれからもあきらめずに頑張っていきたいと思います」
と4年後を見据えている。
葛西選手にはメダリストからコメントが相次いだ。カーリング女子・LS北見の吉田知那美選手は、「限界は人が決めるものでなく、自分自身で乗り越えていくものだと感じました。そう思わせてくれたのは、人間の限界を超え続けてくださっている葛西選手があってのことだなと思っています」と笑顔で語った。
「メダルを取れなくなる」というジンクスも囁かれた「主将」の大役をつとめながら、500メートルで金、1000メートルで銀メダルを獲得した小平選手は、
「葛西さんがソチ五輪の時に主将で銀メダルを獲得してくださっていたので、『主将はメダルを取れる』というジンクスに、徐々に変わっていけるんじゃないかと思います」
と葛西選手からの「バトン」をつなぐコメントを残した。
互いを称える選手たちの姿もあり、インターネット上では
「レジェンド葛西リスペクト」
「葛西選手が旗手を務めたからメダルラッシュになったんだ!行くぞ北京、頑張れ葛西選手!」
「葛西紀明選手は最年長でメダルは獲れなかったが、年齢関係無く次の北京五輪を目指して続行するので、格好良いしあんな風になりたい」
といった声も数多い。
葛西選手は団体戦を終えてから五輪期間中ながら帰国。すぐに札幌でのジャンプ国内戦に出場したことを、24日のブログで報告している。さらに27日の更新では、24・25日の2試合で「両日とも3位と表彰台ゲット!!」と調子の良さを見せ、「明後日からまた海外遠征です。次はフィンランドのラハティというところでワールドカップ2戦。その後は怒涛のノルウェーシリーズ。10日間ずーっと飛びっぱなし。表彰台に上がれるように頑張って来ます!!」と意気込みをつづっていた。