平昌五輪フィギュアスケートで2連覇の羽生結弦選手が2018年2月27日、東京・有楽町の外国特派員協会で会見を開き、挑戦を明言している「4回転アクセル」への思いを熱弁した。
スポーツ記者ばかりではなかったこの日。どういうジャンプなのか説明を求められると、羽生は立ち上がって「実演」。その時、首に掛けていた金メダルを――。
「自分の『夢』である4回転アクセル」
この日、司会に「4回転アクセル。正直それがどういうジャンプなのか私には分かりません。教えてほしい」と尋ねられた羽生選手。椅子に座って始まった会見だが、「よければ立ってもいいですよ」と促されたこともあり、苦笑いしながら立ち上がった。
羽生選手は「まずジャンプは6種類あって、5種類は後ろ向きで跳ぶけど、アクセルだけは前向きから跳んで後ろ向きに降りるので半回転多く回ります。ほかのジャンプから説明します」と言ったかと思うと、「金メダルがちょっとジャマなんですけど...」と、どこか慣れた手つきで首から下げていた平昌五輪の金メダルを外し、丁寧に机上に置いた。
そこから熱弁が始まった。助走のポーズをとった羽生選手は「後ろに滑っています。ジャンプは後ろに滑って、跳んで、(前を向いてから跳ぶ)アクセルは1回転だと前向きにおりちゃいます。前向きにおりるのはフィギュアの競技上ステップ、スピンといったもの以外ありえない。アクセルは前から跳んでまず半回転。ここから1回転していくから、半回転多く回ります。クワドラプル(4回転)といってもアクセルは半回転多いので、普通のジャンプより難しい」と身振り手振りで説明した。
話は止まらず、「もっと技術的な説明をすると」と言って続ける。「後ろ向きで跳ぶジャンプは手を横に回しながら跳べるので回転をかけやすい。ただ、アクセルは跳ぶ前に手を後ろに持っていってから前に出さないといけないので、遠心力をすごくかけづらいんです。そのうえで4回転半まわるので難しいということです」と腕の動作についても話した。
そうして「まだ誰も試合で成功させたことがないし、実際に4回転半の練習をしている選手も少ないと思います。その中で、初めの人にはなれなくても、自分の『夢』である4回転アクセルをなんとか成功させたいなという気持ちでいます」と強いこだわりを見せていた。
「自分のコーチに『お前は5回転をやれ』と言われていた」
さらに「将来的に5回転もありえるのか」という質問も。羽生選手は「ジャンプの種類にもよりますが、今までフィギュアスケートが科学的な根拠から研究した結果、5回転までは人間の能力でできるのではないかという結果が出ているそうです」と前提を話したうえで「なので、挑戦できるならしてみたい気もしますし、5回転半は無理かもしれないですけど、小さいころから自分のコーチに『お前は5回転をやれ』と言われていたので挑戦したいなという気持ちはあります」とも。
その後、報道陣から「一般の人にもわかるような例えで、4回転や5回転の難しさを説明してもらえないか」と問われた羽生選手。「4回転の難しさは人によって違うと思うのですが。えーと、ああ...」と困ったように天井を見上げ、「初めてこういう質問がでました」と苦笑い。「えっと...。ええ...」ともうしばらく悩んだうえで、「目をつぶって、回転しながら、3重跳びやってるような感じですね。4回転半は2回転しながら4重跳び、5回転は3回転しながら5重跳びする感じです」との例え話を持ち出した。うまく説明できなかったと思ったのか、机に向かって突っ伏していた。