対中国への「ソフトな封じ込め」 トランプの駆け引きは始まっている

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   現在、国際経済界で最も注目されている問題の一つは、「中米間で大規模な貿易戦争が勃発するかどうか」という点にある。

   その駆け引きは米国による中国に対する「ソフトな封じ込め」という形で、実質的に始まっている。

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「米国の価値観への挑戦」

   米国のトランプ大統領はアメリカ現地時間の2018年1月30日に行った一般教書演説で、「中国とロシアが米国の経済と利益に挑戦しているだけでなく、米国の価値観にも挑戦している」という見解を示した。ブッシュ元大統領及びオバマ前大統領も、同じ演説の際には中国とロシアを常に戦略的な競争相手と見なしてきたが、今回のトランプ演説は明らかに中国とロシアを米国の価値観に対する脅威と描写。イデオロギーの対立を強調する「目新しさ」を感じさせるものだった。

   このトランプ氏の発言は、「中国の台頭は国際的な政治経済の秩序に衝撃を与えるだけでなく、200年以上続いてきた西洋文明主導の世界体制を揺るがす」と、欧米諸国が考えていることを示している。それは、中国が全世界に対してハードパワーとソフトパワーを使い、かつて米国が中国に対して展開してきた「封じ込め(Containment)」という戦略が今や通用しなくなり、米国とその西欧の同盟国は戦略の調整に入っていることを意味する。海外に対する中国の影響力を阻害するため、彼らは従来の軍事的な外交手段による中国への「強硬な封じ込め」に頼るだけでなく、「ソフトな封じ込め」という方法も重視しつつある。

増す中国のソフトパワー

   1990年代初頭、西側諸国は一連の軍事的、外交的な対応に加え、経済制裁によって中国に対する封じ込め政策をとった。米国の学者ジョセフ・ナイ氏の言葉を借りると、当時の西側諸国が頼っていたのはまさにハードパワーによる手段で、中国を世界の隅に追いやることに力を注いでいた。しかし、過去20年間の中国の急速な発展が全世界に与えた影響は西側諸国の予想を遥かに上回るものだった。米国主導の東南アジアにおいて中国を封じる策略は効果が見られず、いわゆる「第一列島線」の戦略でも中国を抑えることはできなかった。そして、最近の「一帯一路」イニシアチブは国際的な政治経済の秩序を変えるだけでなく、中国がハードパワーとソフトパワーを行使する機会ともなっている。

   ハードパワーは力で相手を屈服させるのに対し、ソフトパワーは主に心理的に攻勢をかけるものだ。欧米側はこれまでずっと中国のソフトパワーは弱いと思っていたが、多くの発展途上国の目には「中国のモデルは成功した」と映っている。かつて、「メイド・イン・チャイナ」は常に粗悪品と見下されてきたが、中国が「世界の工場」の発展の段階から歩み出すにつれて、欧米諸国においても、かなりの程度の汚名をそそぎ、中国のソフトパワーの新たな勲章となっている。ワシントンでの報告でさえも、中国が人工知能(AI)や次世代移動体通信の5G技術の面で世界をリードしていることを認めている。

   中国が次第に向上させているソフトパワーに対抗するため、西側諸国は「世論」による戦いにより力を入れているように見受けられ、各国の国民に「中国モデル」に対する疑いと否定的な見方を持たせようと仕向けている。

「シャープパワー」という世論操作

   最近、欧米の政界や学界では、「シャープパワー」について語る人が少なくない。「中国とロシアは浅ましい手段で海外の世論を振り回している」と言うように、ある国が他の国や世界の世論を操作することを意味する。「ソフトパワー」が、表面的には理念を通して他の人々に訴えるものなのに対し、「シャープパワー」はデマや詐欺的な手口で人を騙すものだ。

   ただ、「シャープパワー」という概念は実質的には新しいものではない。ジョセフ・ナイ教授は、「『シャープパワー』とは実のところ『ハードパワー』の一種であり、すでに冷戦時代には米国とロシアが活用し、狡猾な語り口で人の心を欺いてきたものだった」と指摘している。

   現在、欧米で「中国とロシアが『シャープパワー』を用いている」と主張されるとき、強調されているのは、「中国とロシアは大ボラを吹いているが、我々が話していることは真実だ」というものであり、中国とロシアに対する「ソフトな封じ込め」の一部だ。

   最近、欧米メディアは「中国はアフリカ連合の本部の建設を援助しているように見せかけて、実は密かに盗聴しようとしている」と伝えたが、事実を確認するすべはない。これを「シャープパワー」と言うかどうかは措くとしても、これに類する中国のイメージを傷つける「ソフトな封じ込め」は今後も増え続けるだろう。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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