増す中国のソフトパワー
1990年代初頭、西側諸国は一連の軍事的、外交的な対応に加え、経済制裁によって中国に対する封じ込め政策をとった。米国の学者ジョセフ・ナイ氏の言葉を借りると、当時の西側諸国が頼っていたのはまさにハードパワーによる手段で、中国を世界の隅に追いやることに力を注いでいた。しかし、過去20年間の中国の急速な発展が全世界に与えた影響は西側諸国の予想を遥かに上回るものだった。米国主導の東南アジアにおいて中国を封じる策略は効果が見られず、いわゆる「第一列島線」の戦略でも中国を抑えることはできなかった。そして、最近の「一帯一路」イニシアチブは国際的な政治経済の秩序を変えるだけでなく、中国がハードパワーとソフトパワーを行使する機会ともなっている。
ハードパワーは力で相手を屈服させるのに対し、ソフトパワーは主に心理的に攻勢をかけるものだ。欧米側はこれまでずっと中国のソフトパワーは弱いと思っていたが、多くの発展途上国の目には「中国のモデルは成功した」と映っている。かつて、「メイド・イン・チャイナ」は常に粗悪品と見下されてきたが、中国が「世界の工場」の発展の段階から歩み出すにつれて、欧米諸国においても、かなりの程度の汚名をそそぎ、中国のソフトパワーの新たな勲章となっている。ワシントンでの報告でさえも、中国が人工知能(AI)や次世代移動体通信の5G技術の面で世界をリードしていることを認めている。
中国が次第に向上させているソフトパワーに対抗するため、西側諸国は「世論」による戦いにより力を入れているように見受けられ、各国の国民に「中国モデル」に対する疑いと否定的な見方を持たせようと仕向けている。