共和党議員も変わり始めた
アメリカの犯罪率の高い地域などではかなり前から、外部からの侵入だけでなく、生徒間のトラブルを監視するために、金属探知機や監視カメラを設置し、警察官を配置している学校が少なくない。
今回の事件の容疑者は19歳で、精神的な問題を抱えていた。2月23日、フロリダ州のリック・スコット州知事は、州内の全公立校への警察官配置や、メンタルヘルスの強化、銃購入の年齢の18歳から21歳への引き上げを提案した。
全米ライフル協会(NRA=National Rifle Association)から政治献金を受けている共和党の議員の間でも、こうした規制強化を支持する声があがっている。
20日に実施された全米の世論調査によると、今回の事件でも使われたアサルト銃の所持禁止を67%が支持している。一方、反対派は「こうした銃器が出回っている以上、自分や家族の命を守るためには同様の銃器が必要だ」などと主張する。
フロリダ州ダニーデンに住む70代の男性、クリスは、銃のある家庭で育った。「自分や家族の身を守るため」に、今もクロゼットに銃を保管していると、実際に見せてくれた。ほかの人が使えないように、鍵は本棚に隠してある。
クリスは言う。
「個人が銃を持つ権利は守られるべきだし、ほとんどの銃所持者は、きちんと銃を管理している。精神疾患のある人の銃保持や、アサルト銃は禁止すべきだ。銃規制に反対する人たちは、何かひとつ規制して取り上げられたら、ずるずるとすべて規制されてしまうと恐れているんだ。でも、そう考えるのは間違っている。そんなことになるはずがない。
銃規制強化を求めて今、全米の高校生たちが怒り、動き出した。こうした若者たちが、やがて投票できる年齢になる。若者や女性たちがさらに声をあげ、銃規制はこれから徐々に強化されていくはずだ。でもそれには、10年、20年と長い年月がかかるだろう」
(敬称略。随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。