中西経団連で日立の原発輸出どうなる? 会見で示した「クール」な見解

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   経団連の次期会長に内定した中西宏明・日立製作所会長と榊原定征会長が2018年2月13日、お披露目の記者会見を行った。中西氏はこの間、記者に囲まれての「ぶらさがり取材」には応じているが、着席して報道陣の質問に答えるのは初めて。日立は英国へ原子炉を輸出する計画があり、国策として原発輸出を推進する安倍政権との関係が注目された。コンピューターエンジニア出身の中西氏は原発事業に比較的さめた考えを表明し、政府が国策で原発輸出を進めたとしても、最終的には採算重視で判断するクールな一面を見せた。

「ホライゾンのプロジェクトの前提条件はインベスタブル、投資可能なプロジェクトにするということが英国政府と日立の共通の認識で、投資を決めたものだ。投資を決めてから、アレバ、ウエスチングハウスの破たんのように、新しい大きな炉の建設にコストが予見できないリスクが生じた。福島の事故も多少影響している。従ってインベスタブルだよねって説明することが正直申し上げて難しくなった」
  • 日立の原発輸出どうなる?(画像はイメージ)
    日立の原発輸出どうなる?(画像はイメージ)
  • 日立の原発輸出どうなる?(画像はイメージ)

政府の公的支援との関係

   経団連のホームページには記載がないが、中西氏は日立の英国への原発輸出について「国民負担が増えるのではないか」という民放記者の質問に、こう答えている。言うまでもなくアレバはフランス、ウエスチングハウスは米国の原子炉メーカー大手で、いずれも採算悪化で経営破たんした。

   ホライズンは、日立が2012年に買収した英国の原発事業者「ホライズン・ニュークリア・パワー」で、英国で原発2基の新設を計画している。ところが福島原発事故後の安全対策で原発のコストがかさみ、英国で原発の新設が進むか雲行きが怪しくなった。そこで英国と日本の両政府が債務保証など支援を表明した。つまり、原発の新設はコスト的に優位性がなくなり、政府の公的支援がなくては成り立たなくなったということだ。

   中西氏が「インベスタブルと説明するのは難しくなった」と発言したのは、このへんの事情を指している。中西氏は「原子力という技術とエネルギーシステムは、国の施策と産業界が一体で推進しないと成り立たないものだと思っている。もちろん発電所を作る時の経済原則というのはきっちり守らなければいけないが、その技術の国際的な関係等を含めて、国の関与なしにこの産業が成立するとは思っていない」とも発言した。

   中西氏は「(英国で新設する原発は)ちゃんと投資して、長い間発電することによって十分回収できることが前提条件になっている。ただ建設中のリスクを誰が背負うんだという一点だけ、政府がコミットしないとできませんよね、というのが英国、日本政府と我々の共通の理解になった」と説明した。

「しっかり立場をわきまえて、対話しながら、将来の構造を作っていくのが大事だ」

   もちろん、日立は英国での原発新設を最終決定したわけではない。日英の政府保証をつけても投資家が集まらない場合は、新設を中止する方針で、19年度に最終判断する方針だ。この点について、中西氏は「まあ、それでもって(日英政府と)合意までしたわけじゃない。日本政府が全部カネ出して、いっさいがっさい面倒みるという前提ではそもそもない。我々が全部カネを出すわけじゃなくて、投資家に対する保証を日本政府がいろいろ保険も考えましょうねと今、言っている段階にすぎない」と解説した。

   経団連はホームページで公表せず、マスコミもここまで詳しく報じていないが、日立と原発をめぐる中西氏の主要な発言はこの通り。中西氏は原発輸出を進める安倍政権との関係について「しっかり立場をわきまえて、対話しながら、将来の構造を作っていくのが大事だ」と述べた。日立としてもウエスチングハウスの買収で経営危機に陥った東芝の二の舞を踏みたくないのは当然だ。日立の東原敏昭社長は英国での原発新設について「企業だから、採算のとれないものはできない」と断言している。

   中西氏が経団連会長になっても、安易な原発輸出などリスクが高すぎて踏み込めないのが現実で、最終的に日立は採算重視で判断するとみられる。もしもそれができないなら、日立も東芝と同じ轍を踏むことになりかねない。

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