紙巻きたばこの需要減少に苦しむ日本たばこ産業(JT)が、「加熱式」で大勝負に出る。今後3年間で1000億円以上を投資して新製品を投入、2020年末までに「シェアナンバーワンの4割をとる」と宣言したのだ。受動喫煙防止やたばこ増税などの議論次第で、逆風は一段と強まる。他社の顧客をがむしゃらに奪っていかないと生き残れない、という強い危機感がにじむ。
寺畠正道社長は2018年2月6日に開いた17年12月期の決算発表記者会見で「高温加熱タイプに参入して、競合からシェアを奪取する」と力を込めた。加熱式といってもさまざまなタイプがあり、JTが展開する「プルーム・テック」は約30度で葉タバコを加熱する低温加熱式。これに対し、先行する米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「アイコス」や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の「グロー」は数百度の高温で熱するのが特徴だ。
全国販売は9月を予定
2018年末にも、より高温で加熱する新製品を投入し、ライバルと同じ土俵で勝負する。同時に現在の低温加熱タイプも「進化版」の開発を進め、製品ポートフォリオを拡充する計画だ。
プルーム・テックは2016年3月に福岡市内の一部店舗とオンラインショップで販売を開始。東京都心部では17年6月から、都全域では17年10月下旬からと、まだ日が浅く、都内のコンビニエンスストアにおけるシェアは18年1月末現在で3.3%だという。デバイスの供給制約がある中では「順調な立ち上がり」(JT)とみる。2月からは札幌、仙台、横浜、名古屋、大阪、広島各市のたばこ店でも販売を開始。製造能力の増強を進め、全国販売は9月を予定している。
ライバルのアイコスは2016年4月から、グローは17年10月から、それぞれ全国販売しており、プルーム・テックが出遅れているのは事実だ。だが、JTがそれまで何もしなかったわけではない。実はライバルに先駆けて、13年12月にプルーム・テックの前身となる「プルーム」を発売。「全く新しいスタイルでたばこを楽しめる画期的な製品」とアピールしたが、時代より先に行き過ぎていたのか、売り方がまずかったのか、ほとんど話題にならなかった。それだけに、今度こそライバルを圧倒できるのか、注目される。