米フロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射事件を巡り、銃規制を求める声が強まる中、ドナルド・トランプ大統領を始め、政治家は規制には消極的だ。
それどころか、トランプ大統領は銃ではなくゲームや映画の表現を規制する考えを披露し、議論が巻き起こっている。
学校での銃撃事件は13年以降で290件
米国では近年、銃の乱射事件が相次いで発生しており、学校が現場となることもある。銃規制を求める米市民団体「エブリ・タウン・フォー・ガン・セーフティ」の発表した資料によると、2013年以降、学校や大学で発生した銃による事件は290件に上り、18年だけでも2月時点ですでに17件だといい、「平均して週に1度」と、その頻度の高さを表現している。
18年2月14日にフロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射事件では、最低でも17人が死亡した。犯人はライフル銃で武装した19歳の元生徒の男性で、犯行後は警察に逮捕され、動機などが調べられている。
米国における銃規制の議論は長く続いており、銃による被害を受けた人々からは規制を求める声も大きいが、「銃を持つ権利」を訴える市民団体・全米ライフル協会の政治への影響力は大きく、規制への動きは進んでいない。
フロリダでの銃乱射事件を受け、トランプ大統領は、こうした事件への対策として、購入者の精神状態の調査を厳しくすること、銃の購入可能な年齢を18歳から21歳に上げること、そして58人が死亡し、500人以上が負傷して米史上最大となった17年10月のラスベガスでの銃乱射事件で使用された改造パーツ「バンプストック」の禁止などを提案した。
武装教師を抑止力に
それら以外にも、トランプ氏は対策について複数のアイデアを披露している。
その内の1つが、銃の扱いに慣れている教師に銃を隠し持たせる、というものだ。
トランプ大統領はツイッターで、銃が無い学校は襲撃者にとっては反撃の恐れのない場所であり、「教師の20%」が訓練を受け、銃で武装することで、
「悪意を持った者が学校に来ても、すぐさま反撃できる。高度に訓練された教師たちは、襲撃者たちに対する抑止力としても働く」
と解説。それにより、警察や現場に到着する5分から8分の間に問題を解決できるとし、
「ただ守るだけではうまくいかない、攻撃をしなくてはならない」
と、つづった。このアイデアは21日にホワイトハウスで銃乱射事件の被害者や教育者を招いて開かれた対談でも披露されたが、その場でも賛否が分かれ、トランプ大統領もその反応への理解を示していた。
また、トランプ大統領は、ビデオゲームや映画の暴力的な描写を規制する考えも明かしており、22日にはホワイトハウスで開かれた会議でも、
「何らかの策を講じなくてはいけない。性的な物が含まれていなければ、人を殺す描写が含まれている映画も見ることができる」
と批判を繰り広げ、既存の物とは異なる新たなレーティングシステムの導入の必要性を主張している。
この案を巡り、ツイッターでは、
「我々は銃ではなくゲームの規制を望んでいるのか?」
「違う。他の国にもゲームや映画があるが、NRA(全米ライフル協会)は無いんだ」
「私の知る限り、スイスにもゲームや映画はあるけど、学校を襲ったことは無い。私たちも銃を持っているけれど、厳しく規制されている」(原文はいずれも英語)
と、銃ではなくフィクションを批判する姿勢に反発が巻き起こっている。米カリフォルニア州では2005年、未成年への暴力的なゲームの販売を禁じる法律が成立しているものの、連邦裁判所により言論の自由に反するために違憲とされている。また、同法案を提出した民主党議員は銃器の密売など複数の容疑で逮捕されている。