厚労省が追加したい裁量労働業務は2つ
現在、裁量労働者の割合は1~2%である。この意味で筆者の境遇は珍しい。裁量労働者にとって、自分の労働時間はよくわからない。論文一本を書くのに必要な時間なんてよくわからない。裁量労働とは、かけた時間がわからない業務だ。だから、そうした業務を行う人は少ない。
それを無制限に拡大するというのなら、裁量労働の濫用である。ここで、我々がどのよう雇用状況なのか、まず確認してみよう。確認できない場合は違法契約のおそれもあるので労働基準監督署へ行ったほうがいい。
確認出来た場合、自分が裁量労働者かどうか調べてみよう。適法な裁量労働者は1~2%なのでそれほど多くない。もし、適法な裁量労働者ではないにもかかわらず残業代が少ないと思うなら、これも労働基準監督署に行ったほうがいい。
違法な裁量労働、違法な残業代不払いは、今の法律の下でしっかり取り締まるべきだ。それとともに、労働時間を計れない業務もあるので、それを適法な裁量労働として追加するのは合理的だ。ちなみに、厚労省が追加したい裁量労働業務は2つだ(「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」)。
労使の合意がないと企業として裁量労働を採用できない。人手不足を背景として、みなし労働時間の単価をいくら以上と決めて労使交渉すれば、裁量労働を導入する企業はどうなるか。今なら単価を高めても採用したくなるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。