かつて「ゲーム大国」の名を独占した日本だが、e-Sports(eスポーツ)普及では乗り遅れ、「後進国」とさえ評されることがある。
そんな実態が浮き彫りになる一幕があった。NHKがeスポーツの人気・将来性を掘り下げた番組を放送したところ、視聴者から「eスポーツはスポーツとは言えない」など、否定的な反響が次々と寄せられたのだ。
2024年の五輪では正式競技に!?
プロによるゲームプレイを、単なる遊びではなく「スポーツ」として位置付けるeスポーツは、国際的にその地位を急速に高めている。
すでにその「競技人口」は1億人を超えるといわれ、賞金も、トップクラスの海外大会では億単位に達する。2022年のアジア競技大会では正式種目入りがすでに決まっており、24年のパリ五輪での採用も検討中だ。日本でもこの18年2月には、統一団体として「日本eスポーツ連合」が設立された。
これらの最新動向を報じたのが、2月17日に放映されたNHKの「週刊ニュース深読み」だ。「ゲームで金メダル?世界が熱狂!eスポーツ」と題して、60分の1秒単位での緻密な操作でコンボ(連続攻撃)を決めるゲーマーの姿や、巧みな連係プレイで勝利を掴み取るプロチームの映像などを紹介、情報時代ならではの新たな「スポーツ」としての可能性を、肯定的に掘り下げた。
ところが、視聴者からの反応は芳しくない。
番組では、寄せられた反響をリアルタイムに読み上げていったのだが、
「汗水流して努力しているアスリートと同じとは思えない」
「ゲーム依存の問題深刻になってますよね!(その問題が)増えるだけ!!」
「ゲームばっかりやっていてはコミュニケーション能力育たないのでは?」
などなど、あまりに辛口の声が目立つ。
汗をかかないスポーツはスポーツじゃない?
特にメールで寄せられたという意見は、
「スポーツは人間が体を張って、一生懸命身体能力のすべてを全力で出し切るもの。ゲームをスポーツと扱うなど問題外」(岩手県・50代男性)
「古い考えかもしれないが、スポーツとは汗をかくことだと思うので、スポーツとは言えない」(愛媛県・60代男性)
と、非常に守旧的だ。これには、出演していたお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」の吉村崇さんも、「(スポーツとは汗をかくことという)その理論でいったら、じゃあアーチェリーとかはどうなるんだ、ってなっちゃう」と首をかしげる。他の出演者からは、
「(eスポーツの)『スポーツ』という言葉が、これだけ皆さんに違和感を持たれている状況。それが日本がeスポーツにおいて『後進国』になってしまっている原因だと思う」(NHK解説委員・中村日出さん)
「世界の若者から、日本の若者が遅れてしまう。そういう危機感も持たないとだめだと思いますね」(早稲田大学教授・原田宗彦さん)
と、視聴者の頑なな反応に対し、厳しい意見が寄せられた。
日本人のスポーツ観が影響?
ツイッターなどでも、こうした否定的な意見の数々が話題となった。
「NHKでeスポーツ特集やってたが、スポーツとは認めない派の意見として『汗水流して苦労するのがスポーツだ』と、見事に日本人のアレなスポーツ観丸出しで笑ってしまった。こんなだから高校野球が興行として成り立つんだろうなぁ」
「NHKのeスポーツ特集の話を見てると日本人のスポーツ観は体育教育のたまものですね、モータースポーツも『乗り物に乗って楽してるのにどこがスポーツだ』と認めない勢がいるくらいだし」
などなど、日本人のスポーツ観そのものに問題を求める投稿のほか、
「日本でeスポーツが理解されていくのはまだまだ先なのだな、と思ってしまった 本当に後進国だ、悲しいよ」
「逆に中高にeスポーツ部作って、運動部並みに上下関係や朝練などを課せば、親がeスポーツもスポーツと納得しそう」
といった嘆息や皮肉も。また、こんな呼びかけも見られる。
「eスポーツに否定的な人は一回eスポーツの大会をネット配信で見たほうがいいです。日本で言われてるスポーツと同じくらい盛り上がるコンテンツなのに否定的になるのはもったいない」