平昌五輪フィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)の後、荒川静香氏は日本の宮原知子選手(19)と坂本花織選手(17)に「メダルの可能性を強く感じています」と述べた。
宮原選手は4位、坂本選手は5位発進。3位まではそれぞれ約3点差と5点差がある。ここから逆転できる可能性とは――。
「『ショート貯金型』の戦いをする選手」
女子ショートは2018年2月21日に行われ、上位陣が会心の演技を連発。大会前から優勝争いを繰り広げると目されていたOARの2強、エフゲニア・メドベージェワ選手(18)が女子SP世界最高記録を更新する81.61点をマークすると、アリーナ・ザギトワ選手(15)が82.92点ですぐに更新した。
3位争いは混沌としている。ショート3位のケイトリン・オズモンド選手(22)は78.87点、4位の宮原選手は75.94点、5位の坂本選手は73.18点で、いずれもショートの自己ベストを更新。6位にはカロリーナ・コストナー選手(31)も73.15点で続く。
23日のフリーに向け、この点差について、トリノ五輪金メダリストの荒川静香氏は21日放送の「news every.」(日本テレビ系)で
「いま3位から6位までは大きな得点差と言えず、メダル圏内と言えます。宮原選手は3位と3点差、坂本選手は5点差。3位のオズモンド選手は本来『ショート貯金型』の戦いをする選手なので、『フリーに強い』日本選手にメダルの可能性を強く感じています」
と話している。3回転ジャンプの基礎点が5点前後であることを踏まえると、フリーのジャンプ1回のミスで順位はガラリと変わる。
フリーの自己ベストはオズモンド選手142.34点、宮原選手143.69点、坂本選手142.87点。単純比較だが、日本勢2人が上回っている。
宮原選手「回転不足」の不安を払拭か
宮原選手はジャンプに不安を残していた。11日の平昌五輪団体戦ショートで、冒頭の3回転ルッツ+3回転トウループの連続ジャンプがともに「回転不足(アンダーローテーション)」の判定を受け、出来栄え点(GOE=完成度に応じて-3~+3の加減点がつく)も-1.2点がつけられた。
それが個人ショートでは文句なしに着氷。本人はショートの後、「団体戦で回転不足を取られてしまったので、次こそは、と思って頑張りました。少しの間でしたが個人戦まで練習してきました」と、一時帰国して練習した成果を感じているようだった。
ただ、GOEは+0.7点。上位陣が連続ジャンプで軒並み+1点以上を得ているのと比べるとやや見劣りする。10年バンクーバー五輪代表の小塚崇彦氏は21日放送の「Nスタ」(TBS系)で、
「ジャッジの中に『宮原選手=回転不足』のイメージがあるのかもしれない。今日も連続ジャンプの後で、『審議』の黄色いランプがついていたんですよ。本当にきれいな流れのあるジャンプだったと思うんですけど、審議がつくということはまだジャッジの頭の中に残っているのかなと思います。審議ランプがつかないきっちりとしたジャンプを跳んでいくことで、高得点を積み重ねられると思います」
と見解を述べている。
一方の坂本選手について、荒川氏は前出「news every.」で
「坂本選手はジャンプで勝負に出て、得点源にしていくタイプ。ショートは基礎点が1.1倍になる後半にすべてのジャンプを跳びました。3回転フリップ+3回転トウループは基礎点が高く、GOEで加点も積める素晴らしい出来」
と語った。ショートで跳ぶ3度のジャンプをすべて後半に配置したのは、今大会で坂本選手以外に、ザギトワ選手とメドベージェワ選手の上位2人だけだった。
坂本選手は直近1月の四大陸選手権でも同様のプログラムで挑んでおり、フリーは7回中5回のジャンプを後半に配置(宮原選手は7回中4回)。最終的にショート(71.34点)、フリー(142.87点)、トータル(214.21点)いずれも自己ベストを更新した。そのタイミングで平昌五輪に臨んでおり、勢いに乗っている。