日本初のバイオベンチャー企業と話題になったアンジェス社 (本社・東京) が2018年 1月22日、厚生労働省にHGF (肝細胞増殖因子) 遺伝子薬の製造販売承認の申請をした。
細胞を増やす生理活性物質HGFを見つけたのも日本の研究者。承認されれば純粋な国産遺伝子薬の第1号で、日本の薬の歴史に新たな 1ページが加わることになると、関係者の注目を集めている。
早くも承認後の価格に関心
遺伝子薬は一般名ベペルミノゲン・ペルプラスミド。足の動脈が詰まって最終的には足の切断を招く閉塞性動脈硬化症やバージャー病患者の重症虚血肢に注射する。HGFは肝細胞に限らずさまざまな臓器の再生・修復作用があり、遺伝子を注射された場所の血管新生を促すことから森下竜一・大阪大学教授らが実用化を目指してきた。
アンジェス社は実は2008年 3月、厚生労働省にこの薬の承認申請をしている。大阪大学病院などで行われた偽薬との比較試験では、痛みが軽減したり潰瘍改善の効果が認められた。一方、日本独自の遺伝子薬であることから承認に慎重意見もあり、症例数が少ないとの指摘などからアンジェス社は2010年にいったん申請を取り下げていた。その後、再生医療への承認優遇制度ができたことから2014年から追加の臨床試験 6例を実施し、今回の再申請となった。年内にも承認が期待されている。
閉塞性動脈硬化症は糖尿病患者に多く、70歳以上では 2割にもなるといわれている。薬物療法や手術では対応できずに切断まで進む重症者が数%あり、治療法が加わることは心強い。日本は遺伝子薬の開発や普及が遅れており、承認後の価格を含め、HGF遺伝子薬の動向が注目されるのは必至だ。
(医療ジャーナリスト・田辺功)