羽生結弦選手の平昌五輪は自分との戦いになるかもしれない。
2018年2月16日に行われた男子シングルのショートプラグラム(SP)は111.68点でトップに立ち、フリースケーティング(FS)とのトータルスコアで自身のもつ歴代最高記録330.43点の更新が視界に入った。
「とにかくミスしない演技で得点を稼ぐだろう」
羽生は今季ショートで基本的に冒頭に組み込んでいた4回転ループを回避し、1難度下の4サルコウに変更した。ケガ明けで平昌五輪が4か月ぶりの実戦となり、「ここ(平昌)に来る前からサルコウで練習していた」という。だが、ジャンプの基礎点が1.1倍になる後半に4トウループ+3トウループのコンビネーションを組んで完璧に決めるなどしてカバー。ノーミスの演技で111.68点の首位で折り返し、自身のもつショート歴代最高記録112.72点にも迫った。
五輪2連覇に加え、15年のグランプリ・ファイナルで記録した歴代最高のトータルスコア330.43点(15年GPファイナル)を更新できるかどうかにも注目が集まる。フリーでおよそ220点が必要となるが、どう戦うのか。
フィギュアスケート解説の佐野稔氏は16日の「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)で、「4回転ジャンプを減らして完成度を優先させてくる。フリーでは今まで4回転を5回やってきたが、そこを減らしてとにかく失敗しない演技をすると思う」と予想。「330.43点の時は、4回転を2種類しか跳んでいない。平昌では4回転を3回にするか4回にするか分からないが、とにかくミスしない演技で得点を稼ぐだろう」としていた。
バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔氏も同番組で「4ループをやるかは明日にならないとわからないが、きっちりとしたクリーンなプログラムで攻めてくるのではないか。それで今日も得点が伸びた。そういうところを狙ってくると思う」と話していた。
15年GPファイナルのフリーは、前半に4サルコウと4トウループ、後半に4トウループ+3トウループのコンビネーションを跳び、219.48点だった。4ループを組み込まずに高得点となった要因の1つは出来栄え点(GOE)。完成度に応じて-3~+3点の加減点がつくが、この3つのジャンプはGOEが順に3点、3点、2点と高く評価された。
「出てきたらやってくれる期待感がある」
GOEの高さは羽生の特徴のひとつ。佐野氏は「グッディ」で「羽生選手は出来栄え点が高い。(加点に必要な要素を)全部持ってる」と指摘した。平昌五輪ショートのジャンプでも2.71点(4サルコウ)、3.00点(3アクセル)、2.57点(4トウループ+3トウループ)と軒並み高評価。首位発進の原動力となった。
またフリーだけで見れば、4ループを組み込んだプログラムではあるが、羽生は17年の世界選手権で223.20点を記録している。完成度やプログラム次第で、平昌五輪のフリーでも220点超えの可能性はある。
なおジャンプに限らず、佐野氏は「ケガで滑っていない時に、足に負担をかけない陸上トレーニングなどをしていた。その結果が随所にみられる。背中のラインがきれいで、スピンの足が少し上がっている感じがする。そういうところがしっかり練習してきたと思う」とコンディションの良さを感じているようだった。
ブランクによるスタミナ不足の影響で、フリーを最後まで完璧に演じきれるかについて不安も指摘されている羽生だが、佐野氏は「羽生君って、練習中にほかの選手と衝突して負傷するなど結構いろいろな逆境があった。そういうときも復活してきた。出てきたらやってくれる期待感がある」と話していた。