検査不正問題の余波
一方、製造業での検査などの不正が相次いだ問題への対応も、各紙求めている。産経は「最優先で取り組むべきは、品質データの改竄(かいざん)や建設談合などで大きく低下した産業界の信頼回復である。企業統治の徹底を促し、不正の根絶につなげなければならない」と強調。日経も「企業倫理を置き去りにしては政策提言や制度改革の要求も説得力がない。規律の浸透も中西氏の課題だ」とくぎを刺す。
政治と経済界との距離感への問題意識も、各紙に共通する。
言葉としては「政治とは適切な距離を保つ必要がある」(日経)ということだが、毎日は中西氏が安倍晋三首相を囲む有力財界人会合のメンバーであり、「政府との協調路線を継承できる」ことが後継に決め手だったこと、榊原定征現会長が2016年参院選の際に消費税率引き上げ延期の首相方針を支持したことなど指摘し、「蜜月一辺倒では経済界の役割を果たしたとはいえない。...(略)...政治が目先の選挙に左右されがちなのに対し、何が国益にふさわしいかを大局的観点から判断し、政府に注文をつけるのが経済界の役割のはずだ。...(略)...政権に追随するだけでは存在感がさらに薄れかねない」と、辛口の指摘。
産経も、財政再建に関連して「安定した経済成長には、財政の持続可能性を高めることも肝要である。与党で無用な歳出圧力が高まるようなら、これにくぎを刺すのも中西経団連に課せられた大きな役割である」と指摘したうえで、子育て支援への経済界から3000億円拠出について、受け入れた経団連と難色を示したに日本商工会議所に割れたことを例に、「足並みが乱れるようでは財界の存在感も低下しよう。政府の意向をただ追認するのではなく、是々非々の立場で緊張感のある関係を構築すべきである」とした。安倍政権支持の日ごろの論調の割に、厳しめの趣だ。
日経は、「政府の意向をうかがう姿勢があるとしたら、求心力は高まるまい。毅然ともの申せる経団連でなければならない」との書き方はあまり違わないが、政権の賃上げ要請を取り上げ、「企業の自主判断によるべき経営資源の配分への政府介入は、民間の活力をそぐ恐れがある」と、民間企業の経営の自由の視点から危惧の念を示している。
政治との距離に関する視点は、社説では取り上げていない朝日、読売も似通っていて、朝日は10日朝刊経済面で「政権との距離感重視」と、中西氏に決まった背景を解説し、「政権にどのような姿勢を見せるのかが就任後は問われることになる」と書いている。