「ネタ」と「筆者」が集まる宝の山
近年、書籍化が目立つのは、出版界側の事情もあるようだ。出版不況もあって、ノンフィクションを対象とした雑誌は次々と潰れた。かつて活躍した団塊世代のノンフィクション作家も高齢化が進む。新たなライターを発掘して育てたり、経費をかけて取材したりする余裕が出版界全体に乏しい。安定した視聴率で多数の人に親しまれている「Nスペ」は簡単に書籍化できる「ネタ」と「筆者」が集まる宝の山なのだ。
出版が加速することになったのは10年の『無縁社会』(文藝春秋)や15年の『老後破産』(新潮社)のヒットも影響しているようだ。単行本で出版された後、文庫化もされている。「Nスペもの」はすでに多くの人に視聴された番組の書籍化ということもあり、簡単に採算ラインを突破する本が多いようだ。
漫画やアニメ、テレビドラマなどのヒット作をもとに小説化したものを「ノベライズ」というが、いまや「著者・Nスペ」本は「Nスペシャライズ」とでもいうべき一分野を築きつつある。出版社にとっては手軽に出版点数を稼げるという点でも魅力だ。
気になるのは書籍化した後の原稿料だが、NHKに問い合わせたところ、「出版の経緯については、お答えしていません」とのことだった。