貴乃花親方のインタビューを放送したテレビ朝日の特番について、日本相撲協会はテレ朝に対し「肖像権の侵害」を主張したと一部報道があった。
一方、特番は報道目的の放送であり、貴乃花親方も自ら進んで出演したとみられる。いったい協会が「肖像権侵害」を主張できる余地はあるのか。
「『登録商標』のようなもの」
2018年2月9日付の日刊スポーツによると、テレビ朝日系列で7日に放送された貴乃花親方のインタビュー特番に対し、協会広報は8日「同番組の放送に際して必要な申請書類が提出されず、無許可のまま放送された」ことから、「肖像権を侵害された」として対応を協議すると明かしたという。
J-CASTニュースが9日、改めて日本相撲協会広報部に対し、テレ朝の特番が「肖像権の侵害」と考えているか聞いたところ、「昨日の広報担当が相撲記者クラブ加盟記者にそう話したのは事実です」としながら、「その件に関しては特にコメントはありません」とのことだった。なお、一般的に協会員を出演させる際にメディアは協会に申請する必要があるかについては「そうですね」と話した。
元幕内力士で歌手の大至氏(49)はJ-CASTニュースの取材に、「入門時、協会在籍中の管理は相撲協会がすべて行うことは言われます。映像を流す際の肖像権もすべて協会が管理しており、広報部を通して許可が必要です」と自身の経験から明かした。
「報道目的」の放送に、肖像権侵害の主張できる?
そもそも、個人の肖像権を相撲協会のような団体が管理することは認められるのか。
弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士はJ-CASTニュースの取材に対し、まず、「肖像権」とはみだりに容姿を撮影・公開されることなどに伴う精神的苦痛を受けないよう保護を受けられる権利だとし、判例上認められているものと説明。その上で、「個々人それぞれが有する権利ですので、本来であれば団体が一括管理することには違和感があるかもしれません」と話す。だが、
「過去には、一括管理されていることの是非について争われた事件がありました。プロ野球界では、球団と選手が結ぶ『統一契約書』にて、選手の肖像権は球団に所属すると定められ、選手の肖像権を所属球団が一括管理していたのです。そこで、選手複数人が、球団による一括管理を不当だとして主張しました。この事件は最高裁判所まで争われましたが、結果的には球団側の勝訴となっています。理由は、交渉窓口の一本化はメーカーなどライセンシーにとって便利であるし、結果的に選手の氏名や肖像の使用促進も図れる、というものです」
という例を引き合いに、
「この裁判所の立場からすれば、本来は個々人が有する肖像権ですが、相撲協会のような団体が力士や親方との契約などにて一括管理することは認められるといえるでしょう」
とのことだった。
一方、インタビュー特番は「報道目的」での放送と言えるが、肖像権の侵害となる余地はあるか。
「報道目的であったとしても、肖像権を一切考慮しないでいいというわけではなく、肖像権を侵害する場合もありえます。もっとも、報道は国民の知る権利に資するものであり、重要な存在です。肖像権を侵害するからといってあらゆる場合を配慮すべきとなっては、逆に報道の自由が制約されてしまいます。
両者のバランスを考えれば、公共の利害に関する事項、公益目的がある、公表内容が相当である、などの『条件』を備えれば、仮に肖像権の使用について許可を取得していなかったとしても、肖像権の侵害とはいえない可能性があります」
そのため、肖像権侵害が認められるかどうかについて、徳原弁護士は
「テレビ局側からの反論として、前記の『条件』を備えているかどうかが今後重要になってくると思われます」
との見解を示していた。