平昌五輪に合わせて金正恩朝鮮労働党委員長の妹の与正(ヨジョン)氏らが韓国を訪問し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と面会することになった。故・金日成主席の直系の親族による訪韓は初めてで、正恩氏の親書を携えているとの見方をある。
北朝鮮としては「最強」に近いカードを切っただけに、韓国側の反響も大きい。新聞の社説では、保守系を含めて「(北朝鮮が)可能な限りの誠意を見せた」総じて歓迎ムードだ。
与正氏は「金委員長に苦言を呈することができる唯一の人物」
与正氏の訪韓は、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が団長を務める高官級代表団の一員として。専用機で2月9日午後に仁川国際空港に到着し、夜に行われる五輪開会式に出席。11日まで滞在予定で、文大統領との面会は10日に行われる。
韓国の「朝中東」3大紙(朝鮮日報、中央日報、東亜日報)は保守的な論調で知られるが、与正氏訪韓に関する社説では、「対話」か「制裁」かで立場が微妙に分かれた。
朝鮮日報は、文大統領に対して、
「北が非核化決断を下さなければ、韓国が対北朝鮮制裁の先頭に立つしかないという事実も明らかにしなければならない」
「平和的に、北朝鮮の核をなくす唯一の方法は、対北朝鮮制裁だ」
などとして、圧力を強めるように求めた。
これに対して中央日報は、与正氏が「金委員長に苦言を呈することができる唯一の人物」だとして、
「韓国に滞在中、朝鮮半島情勢に対する各国の声を聞いた後、そのまま金正恩氏に伝える可能性がある」
「対話のきっかけになるように最大限の知恵を絞らなければならない。」
とした。東亜日報も、北朝鮮外交の狡猾さを指摘しながらも、
「平昌五輪が、南北の融和ムードを米朝対話につなげる絶好の機会であることは誰も否定できない」
「北朝鮮も米国も、五輪が作ってくれた絶妙な機会を逃してはならない」
と期待を寄せた。
与正氏一行を青瓦台に招いて「南北関係改善のための積極的な姿勢を示す必要」
左派紙では、さらにその傾向が露骨だ。ハンギョレは、北朝鮮が五輪を機に
「韓国はもちろん、米国をはじめとする国際社会との関係を新たに結ぶ強い意志を持っているとみることができる」
として、韓国政府が与正氏らを青瓦台(大統領府)に招くなどして
「南北関係改善のための積極的な姿勢を示す必要がある」
と主張した。
「金与正氏を通じて北朝鮮政権の本音を聞くことができ、韓国政府の意思も明確に北朝鮮側に伝えることができる」
というのがその理由だ。京郷新聞は、与正氏の訪韓を「歓迎する」と断言。北朝鮮が与正氏を派遣したことについて、
「平昌冬季五輪を通じた(北朝鮮側の)南北関係の改善の意志が非常に強いということを示唆している」
「可能な限りの誠意を見せたとみることができる」
と、手放しで喜んだ。