大阪芸術大学の映像学科は2018年2月6日、同学科の学生が宗教法人「幸福の科学」を扱う映画として自主制作したドキュメンタリー作品「ゆきゆきて、地球神軍」の上映を見合わせると発表した。「本編一部に映像使用許諾のプロセスで問題検証の要がある」からだという。
同映画のツイッターは当初、「(教団から)法的措置を警告されました」と投稿していた。一方、教団は7日のJ-CASTニュースの取材に「(法的措置は)とっておりません」と答えた。
「新感覚スピリチュアル・ドキュメンタリー」
映画「ゆきゆきて、地球神軍」は、大阪芸術大学映像学科の学生による卒業制作の作品で、同学科の卒業制作展「Daigei Film Award(DFA)」(学内展:2月10~12日、17日、18日。学外展:3月3、4日)で上映される予定だった。DFAの実行委員会は1月27日、ツイッターで映画の概要を
「熱心な信者に密着し、信仰の意味を勉強するうちに疑問を抱く。『幸福の科学』を肯定する者、否定する者、知らない者、三者の視点から描く。新感覚スピリチュアル・ドキュメンタリー」
と説明していた(ツイートは削除されている)。
だが1月28日、同映画の公式ツイッターが教団から上映取り止めの要求を受けたと明かす。「大学への強い抗議と肖像権侵害での法的措置を警告されました」と投稿し、
「法的に問題の無いよう専門家に指示を受け、編集されています」
と強調。その上で、
「本作は決して『一方的に』教団を批判する反プロパガンダでもなく、教団を賛美するプロパガンダ映画でもありません。なので教団の信者さんにこそ偏見なく見ていただきたいです」
と説明した。
同大映像学科の研究室に取材すると...
映画ツイッターはその後も、「大学を巻き込んでいるため、学生である私一人の見解を安易にここで出すことは出来ません」(2月1日)などと最新の状況を報告していたが、2月6日に
「大学での学内展、学外展は上映見送りを決定しました」
と、上映を見送ると発表。「スケジュールを調整していただいた方がいるのを聞き、有り難いとともに申し訳なく思います」とお詫びした。
実行委員会は同日、ツイッターで1枚の画像を投稿。そこには、映像学科長・大森一樹氏の署名付きで
「上映を予定していました『ゆきゆきて、地球神軍』は、本編一部に映像使用許諾のプロセスで問題検証の要があると判断いたしましたので、今回の上映は見合わせることにいたしました。深くお詫びいたします」
と書いていた。
「映像使用許諾のプロセスで問題検証の要がある」とは、具体的にどういうことなのか。
同大映像学科の研究室は2月7日、J-CASTニュースの取材に
「取材にはお答えできない。研究室としては、これ(学科長の発表文)以上のことは申し上げられない」
と回答する。同大学生課の担当者も「それ以上のことはお答えできない」と話すにとどめた。
一方、「幸福の科学」の広報局は2月7日のJ-CASTニュースの取材に、同大映像学科に「教育的指導」を要求したなどと、メールで回答した。次項にその全文を掲載する。
「法的措置などとは言っておりません」
――映画『ゆきゆきて、地球神軍』の存在をいつ知りましたか?
1月27日、同映画の公式Twitterで初めて知りました。
――大阪芸術大学映像学科から事前にこの映画に関する取材などを受けていましたか?
幸福の科学としてこの映画に関する取材を受けたことはありません。幸福の科学の職員が別の目的で撮影に応じた映像を無断使用されたものと聞いています。
――映画の公式ツイッターは1月28日、「本日、教団の方から上映取りやめを求め、大学への強い抗議と肖像権侵害での法的措置を警告されました」などと投稿しています。映画の制作側にそのような措置を取りましたか?そうであれば理由も教えてください。
1月31日、当教団の職員・信者複数から、映像を無断使用された等の相談があったことから、幸福の科学広報局から大阪芸術大学映像学科に対して、この映画に対して、教育的指導を行なうようお願いいたしましたが、上映取り止めの申し入れはしておらず、法的措置もとっておりません。
教育的指導を申し入れた理由は、当教団は、「表現の自由」「学問の自由」を十分尊重しておりますが、同作品の「予告映像」を確認する限り、被撮影者に対する説明の虚偽および無承諾撮影、被撮影者らの肖像権、プライバシー権の侵害等があるものと考えたからです。
なお、1月27日に、この映画の被撮影者となった者から制作者の学生に対して、約束違反と自らの映像の無断使用を抗議したと聞いておりますが、法的措置などとは言っておりません。
――同映画の上映見合わせについて、映像学科から何か聞いていますか?
大森一樹学科長が「2018年度大阪芸術大学映像学科卒業制作展」の公式Twitterを通してコメントを出されたのは存じております。