2018年2月7日未明(日本時間)に台湾東部で発生した地震を受け、日本国内でも寄附などの支援を呼び掛ける声が高まっている。そんな中、インターネット上では、「台湾の地震で募金する時の注意事項」との書き出しで始まるツイートの拡散が進んでいる。
このツイートは、特定の団体や募金運動を名指しする形で、集まった寄附金が被災地に届かないなどと主張し、寄付を避けるよう呼びかける内容だ。投稿は8日夕時点で6万回以上もリツイート(拡散)されており、その内容を信じるユーザーも続出している。
だが、このツイートで名指しされた団体や募金の主催者にJ-CASTニュースが取材すると、いずれも「投稿の内容は事実ではない」と否定。さらに、名指しされた団体の1つ「ピースウィンズ・ジャパン」の広報担当者は取材に、ツイートの投稿者に対して「法的措置を検討している」と話した。
「知らなかった」との反応も...
話題のツイートは、東京都内に住むという男性が7日未明、地震発生から約2時間後に投稿したもの。「台湾の地震で募金する時の注意事項ね」と切り出し、次のように記している(以下引用部分、原文ママ)。指摘の根拠は示していない。
「ドラえもん募金(朝日系列。一部しか届かず残りは朝鮮へ)
サザエさん募金(フジ系列。同じく。)
日本ユニセフ(一番ダメ。アグネスチャンやスタッフの収益に大半が消費される。)
ピースウインズ(北朝鮮系。言わずもがな。)
募金する際は直接日本赤十字へ!」
なお、上のツイートで名指しされた4つの団体(募金)のうち、テレビ朝日福祉文化事業団の「ドラえもん募金」、フジネットワークシステム(FNS)の「サザエさん募金」、日本ユニセフに関しては、今回の台湾での地震を支援するための募金受付は8日夕時点で実施していない。
だが、この投稿はツイッター上で爆発的に拡散された。8日夕時点で、リツイート数は6万2000回以上、集まった「いいね」の数は5万件以上にも及ぶ。さらに投稿のリプライ(返信)欄などには、
「これすごいね、週刊誌がほっとかないレベルの闇やん」
「基本、テレビ局・マスコミ系はダメですね」
「知らなかったな。かつて災害や海外移植が必要な人への募金のニュース見かけた時はドラえもん募金利用してたけど...使い道にそういう裏が」
「間違ってもユニセフやドラえもん募金に募金してはいけない」
とツイートの内容を信じるユーザーが続出。ただ一方で、「根拠を示していただけます?」「これは酷いデマだなぁ。しかも緊急時に」といった指摘も出ていた。
「事実ではありません」
J-CASTニュースは8日、ツイートで名指しされた4団体(募金の主催者)に投稿の真偽について尋ねた。「一部しか届かず残りは朝鮮へ」とされたドラえもん募金について、テレビ朝日広報部は、
「ご指摘のツイートは把握しておりませんでしたが、そのような事実はありません」
と否定した。
「サザエさん募金」についてフジテレビ企業広報室は、「過去に実施したサザエさん募金で、全国の皆様からご寄附いただいた貴重な募金は、全額を日本赤十字社や公益財団法人日本ユニセフ協会などに寄付しております」と回答。その上で、
「ご指摘のツイートについては認識しておりますが、現段階では何らかの対応を取る予定はございません」
とした。
また、日本ユニセフ協会の広報担当者は、ツイートの内容について「事実ではありません」と否定。投稿者への対応は「現時点では検討していない」とした。
なお、同協会は2016年に「日本ユニセフ協会に関するデマや誤情報にご注意ください」と題した声明を公式サイト上に掲載している。その中では、ユニセフ・アジア親善大使のアグネス・チャンさんが報酬を受け取っているのではないかという噂についても、明確に否定している。
投稿者に取材すると...
また、名指しされた団体の中で唯一、今回の台湾地震で寄附受付や支援を行っているNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」の広報担当者は取材に対し、「完全に事実無根です」と話す。その上で、投稿の中で「北朝鮮系」とされたことについては、
「北朝鮮への食糧支援については、確かに(19)98年に1度実施したことがありますが、本当に支援を必要としている人たちへ届いているかどうかを確認するのが難しくなったため、この1度きりで中止しています」
とした。その上で、ツイートの投稿者に対しては「法的措置を検討しています」とも明かした。すでに、今回の件について弁護士に相談をしているという。
なお、今回のツイートを発信したユーザーはJ-CASTニュースの取材に応じ、投稿の意図について、日本赤十字社の活動を応援するため、などと回答した。その上で、
「注目を集めた事で義援金のより良い使われ方を皆が考える機会になったなら良かった」
として、同社の義援金口座が開設された後に、それを告知するとともにツイートを削除する予定だとも明かした。