「漢字離れ」論争のシンボルに
もう一つは、「漢字離れ」批判の文脈だ。94年に刊行されベストセラーになった『読めそうで読めない漢字2000』(加納喜光著)では、まえがきでいきなり、
「ある若手アナウンサーが横書きになった『旧中山道』を『いちにちじゅう、やまみち』と読んだという嘘のような話がある」
と言及している(ちなみにこの「まえがき」は、他の誤読例も含め上記の朝日記事が元ネタの可能性が高い)。
当時はワープロ、パソコンの普及が進み、若い世代の漢字力低下が論争を引き起こしていた時期だ。当時人気女子アナだった有賀さんが新聞報道を皮切りに、いわばシンボル的にそのやり玉に挙げられ、繰り返しメディアで語られることで、不正確な「伝説」が固定化した――そんな見方ができそうだ。