「夜、楽しめる場所がない」という訪日外国人旅行者の声などを受け、日没から翌朝までの経済活動「ナイトタイム・エコノミー」を活発化させようという動きが目立ってきた。自民党の時間市場創出推進議員連盟が提言を発表、関係者がシンポジウムを開くなど、動きは活発化している。日本のナイトタイムは変わっていくのだろうか。
訪日旅行者はここ数年、右肩上がりで増えており、2017年には前年比19.3%増の2869万人と過去最高を更新したのは、広く知られたところだ。
ロンドンで週末の地下鉄24時間運行
ただ、1人当たりの旅行支出はというと、同1.3%減の15万3921円で、逆に減少した。この理由について、最も多く訪れた中国人による「爆買い」が落ち着いたというのが「通説」だが、観光客が楽しめる機会が足りないとの指摘もある。「特に欧米からの観光客を中心に、夜遊びできる場がない、との声が多い。外国人が喜んでお金を出してくれるような娯楽やサービスを提供できていないことが大きな問題」(観光業界関係者)というわけだ。
安倍政権は、訪日旅行者を「2020年に4000万人、30年に6000万人」に増やす目標を掲げている。このまま何もしなければ、本来得られる旅行支出を得られず、大きな「遺失利益」が発生しかねない。ニューヨークでは夜中も楽しめるショービジネスが発達し、地下鉄も24時間運行している。ロンドンでもナイトタイム・エコノミーを4兆円市場に育てようという計画がスタートし、週末に地下鉄の24時間運行を始めている。日本が何の手も打たなければ、国際間競争に負けてしまう、という危機感も強まっている。
そこで、夜を楽しめるよう観光振興を図ろうという声が盛り上がってきた。同議連は、地下鉄の24時間運行に加え、劇場や美術館などの利用時間を延長することなどを呼び掛けている。こうした流れに呼応する形で、観光関連企業も動き出しており、西武ホールディングスが、傘下の品川プリンスホテルに新たな娯楽スポットを設け、JTBなどは外国人が夜遊びとして楽しめるショーの公演を始めると言った具合で、さまざまな取り組みが広がっている。