経団連の榊原定征会長と連合の神津里季生会長の労使トップが2018年1月23日、東京・大手町の経団連会館で会談し、18年春闘が本格的にスタートした。政府が経済界に賃上げを求める「官製春闘」は5年目となるが、今年は安倍晋三首相がデフレ脱却に向け、初めて数値目標として「3%の賃上げ」を求めた。
経団連は前向きに検討する姿勢を示す一方、連合は3年連続で「4%程度の賃上げ」を求めている。今春闘では労働時間短縮など「働き方改革」も焦点となり、3月14日の大手企業の集中回答日に向け、労使の攻防が本格化する。
連合はベアと定昇合わせ「4%程度」を要求
安倍首相は3%の内訳を示していないが、基本給の水準引き上げ(ベースアップ=ベア)と定期昇給の合計とみられる。会談で榊原会長は「今まで4年間、多くの企業でベアを含む賃上げを行ってきた。今回は『賃上げ3%』という社会的期待を意識したうえで前向きな対応を呼びかけている」と主張した。
連合はベアを2%程度とし、定昇と合わせ4%程度の賃上げを求めている。神津会長は「連合は(賃金)底上げの旗を振り続けている。(中小企業の賃金水準は)大手追従・準拠からの構造転換に向け、労使の歯車が回り始めている」と述べ、中小企業の待遇改善に取り組む姿勢を明確にした。
経団連会長と連合会長のトップ会談は毎年、春闘のキックオフとなるため、両トップの発言が注目される。会談は冒頭の両会長の発言以外は非公開となっている。
「大きな方向性は認識を一致」
会談終了後、神津会長は記者団に「(経団連と)大きな方向性は認識を一致している部分はある。ただ、個々の論点で違いがあることも事実。そのことは率直に披瀝しあい、その中で双方の議論を戦わせ、解を見出していこうということだ」と述べた。
焦点となる賃上げ率は政府・経団連の3%と連合の4%で開きがあるが、神津会長は「3%という数字をキャップにすべきではない。4%に向けて力を合わせていきたい。経団連と大きい方向性では合っているにもかかわらず、結果的に格差が拡大するようでは元も子もない」と述べるにとどまった。
春闘は2月中旬から大手企業の労組が経営側に要求を提出。大手企業の集中回答日は3月14日となる。経団連によると、2017年春闘の賃上げは大企業が2.34%、中小企業が1.81%。大手企業で3%の賃上げは1994年が最後で、それ以降は実現していない。5年目となる官製春闘は、大企業で24年ぶりの3%が実現するか注目される。