東京五輪を2年後に控え、観光地では大勢の外国人客を迎える態勢を整える必要に迫られている。神奈川県では、快適な通信環境を提供するための実証実験として、期間限定で、県を訪れる外国人観光客にスマートフォン(スマホ)を無償貸与すると発表した。
だが「今どきスマホ持たずに海外旅行する人がいるのか」「もともとスマホを使っていなければ、旅先で借りようと思わないのでは」という素朴な疑問が浮かぶ。J-CASTニュースは神奈川県に、実験の意図を取材した。
ネットも国際通話も無料、でも誰が料金を負担?
神奈川県は、横浜や鎌倉、箱根にある計5か所の観光案内所で、外国人観光客に1日50台のスマホ貸し出しを始める。2018年1月30日の発表によると、期間は2月中旬から3月末までの予定で、県では端末を利用した人の位置情報データなどを分析し、外国人観光客に人気の観光スポットを把握して今後の施策展開に生かすとしている。
利用する側にとってのメリットは何といっても、無料で通信できる点だ。インターネットはもちろん、国内、海外を問わず通話も無制限。国際電話は米国やフランス、中国など10か国・地域に限定されるが、いずれも訪日人数が多い場所だ。ここで気になるのが通信料金。仮に利用者が期間中、母国と長時間にわたり通話をし続けたら、相当な金額になるだろう。誰が負担するのか。
実証実験で使われるのは、スマホレンタル事業を手掛ける「handy Japan」社がホテルで導入を進めている「handy」という端末。ハイアットやインターコンチネンタルほか著名なホテルを顧客に持ち、1月30日付で神奈川県と協定を結んだ。宿泊客は端末を使って、無料で通話やネット接続ができる。
ホテルがhandy社と契約する場合は月額料金が発生する。神奈川県国際観光課受入対策グループに取材すると、通信費については、「今回は実証実験のため県の負担はありません」と担当者が回答した。
ネットも電話も無料なのは魅力だが、自分のスマホを持っている人がわざわざ別の端末を借りるだろうか。県の担当者も、多くの外国人観光客がスマホを持参して来日するのは想定している。一方で、その端末で海外と通話できる国際ローミングのサービスに入っていない、あるいは小型wi-fi装置やプリペイドSIMを利用していない観光客も一定数いるとみる。端末はあっても通信できる状態にないこうした人たちなら、スマホの無償貸し出しは効果的というわけだ。