クラブ「青山蜂」摘発、音楽関係者に広がる反発の声 「国は何がしたいんだ」「不条理他ならない」

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   東京都渋谷区の老舗クラブ「青山蜂(あおやまはち)」が風俗営業法違反(無許可営業)の疑いで摘発された一件を受け、多くのミュージシャンや音楽関係者がツイッターでさまざまな思いを発信している。

   ロックバンド「クラムボン」のミトさんは、今回の摘発について「どう考えても納得できるものではありません」と投稿。また、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のコムアイさんは、「きれいなところから面白い文化はうまれない!」との思いをつづっている。

  • 老舗クラブ摘発に広がる波紋(画像はイメージ)
    老舗クラブ摘発に広がる波紋(画像はイメージ)
  • 老舗クラブ摘発に広がる波紋(画像はイメージ)

風営法改正後初の摘発

   警視庁は2018年1月29日、東京都公安委員会の許可を得ないまま、深夜に音楽を流して客を踊らせるクラブの深夜営業を行ったとして、「青山蜂」の経営者ら3人を風営法違反の容疑で逮捕したなどと発表した。

   クラブの深夜営業は2015年の風営法改正で、繁華街など限られた地域にある店舗が、都道府県の公安委員会に「特定遊興飲食店」として許可を得た場合にのみ認められるようになった。なお、それまではクラブの深夜営業は原則として違法だった。

   朝日新聞などの報道によれば、風営法改正後の摘発は今回が初めて。青山蜂は深夜営業が認められる地域に入っておらず、無許可のまま深夜営業を続けていた。また、店のすぐ近くには青山学院高等部の校舎もあり、近隣の町内会からは騒音などで苦情が出ていたという。

   今回の摘発を受けて、ラッパーのZeebraさんが会長を務める「クラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)」は18年1月29日、公式サイト上に声明文を掲載。「非常に残念に思っております」とした。

   CCCCの声明では、クラブが深夜営業の許可を得た上で、地域と協力して営業していくことが「非常に大切なことであると考えています」ともコメント。ただ一方で、深夜営業の許可を得られる地域が限られているとして、

「店舗の中には、特定遊興飲食店営業の許可を得たくても取得できない店舗も出てきていると聞いています。このような店舗は、特定遊興飲食店営業の許可を取得し、警察の指導を受けながら健全な営業を目指したいと考えているにもかかわらず、それが叶わない状況に置かれております」

と現状を憂いた。続けて、「より広い地域で特定遊興飲食店営業を営むことができる環境が整備されていくことを願っております」とも訴えている。

クラムボン・ミト「(摘発は)不条理という他なりません」

   青山蜂は渋谷で20年以上の歴史をもつ老舗クラブ。音楽ファンにとって馴染みの深い地だったこともあり、今回の摘発にはミュージシャンや音楽関係者からも様々な意見が出ることになった。

   逮捕された経営者の知人でもあるというロックバンド「クラムボン」のミトさんは1月31日、「はっきり言って、××(編集部伏字。経営者の名字)さんは逮捕されるような方では全くありません」とツイート。その上で、

「びっくりするほど丁寧で、音楽とクラブに情熱を持ち、その情熱を途切れさせることないように別の飲食店も経営して、『蜂』という空間を、僕らや、音楽を愛する若者たちに提供し続けた方です」

と本人の人柄について紹介した。

   今回の摘発については、深夜営業が認められる地域を定めた2015年の風営法改正の前から青山蜂は同じ場所で営業をしていたとして、「不条理という他なりません」と指摘。似たような状況に置かれたクラブは多いとして、

「同じ音楽を愛し、音楽に養われている僕には、やはりどう考えても納得できるものではありません。こんなこと、あってはならない」

と強い思いをつづった。その上で、経営者のこれまでの努力を考えると「信じられないくらいの息苦しさと悔しさが滲んで仕方ありません」とも書いている。

   また、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のコムアイさんは29日のツイッターで、「青山蜂はいいクラブなので、なくならない気がします」と切り出した。続けて、

「今回は誰かを責めたいんじゃなくて、好きなクラブがないから、小さなクラブはなくなっていいと思う人たちに向けて、それはどんな大きな木の根を切るようなことだか、誰にもわからない、ということをふまえてほしい。きれいなところから面白い文化はうまれない!」

などと4度のツイートにわたって自らの思いを発信した。

「何か対策を講じていたのだろうか」

   こうしたミュージシャン側の発信を受け、ネット上の音楽ファンの間では「法律がおかしい」「国は何がしたいんだ」などと今回の摘発に反発する動きも広がっている。ただ一方で、ラッパーのMC松島さんは1月30日、

「僕はラッパーですが、風営法が踊ることを規制してるわけではない事くらい理解してます。あまりにも、権力が音楽を奪おうとしてるみたいな物言いはアホだと思われそうだ」

との持論をツイートしていた。

   また、2012年に「無許可で客にダンスをさせた」として風営法違反の罪に問われたが、その後16年に無罪が確定した大阪市の老舗クラブ「NOON」の元経営者・金光正年さんは、18年1月30日に更新したフェイスブックで、

「(青山蜂の経営者は)改正風営法後、許可地域外という事を認識していたんだろうか?認識していなければ、情弱と言わざるを得ない。認識していたなら、何か対策を講じていたのだろうか」

と投稿。その上で、「(現行の風営法は)ナンセンスだと思うが現状では従わざるをえない。各地のクラブ経営者はそういうことを考えた上で様々な主張をしてほしい」とも訴えていた。

姉妹サイト