衆院予算委2日目の2018年1月30日、国会の傍聴席に女性ジャーナリストの伊藤詩織さんの姿があった。希望の党・柚木道義衆院議員が、伊藤さんが訴えている元TBS記者との関係を、安倍晋三首相に質問するのに立ち会うためだ。
特にネットでは注目度が高く、朝日新聞・産経新聞などもウェブ版ではあるが比較的大きな扱いで取り上げたこの質疑だが、NHKの「国会中継」ではその様子が映し出されることはなかった。
「陰謀説」が盛んにあおられるが...
理由は簡単だ。「国会中継」は、すでに終わっていたからである。この日の中継は朝9時から始まり、12時前に終了していた。一方、柚木議員が質問に立ったのは14時過ぎだった。
普段NHKをご覧になる方ならご存じだろうが、「国会中継」はすべての審議を中継しているわけではない。そんなことをしたら開会中、NHKはほとんど何の番組もやれなくなってしまう。
だが、今回の件については、ツイッターなどで、
「官邸の指示なのか?国会中継午後やらないのは」
「伊藤詩織さんが傍聴席に来ている事が分かったので、国会中継をNHKがドタキャン」
「詩織さんが傍聴に来られる時だけNHKが国会中継を休むとは、何と露骨なんでしょう」
といった「陰謀説」が相次いだ。翌31日には、午後にも中継が行われた(なお午後の質問者は与党議員)ことも、拍車をかけた。
こうしたことは、今回に始まったことではない。たとえば2015年には、安保関連法案の締めくくり質疑が中継されず、野党などから批判の声が出た。2008年には、田母神俊雄氏の参考人招致が放送されず、「なぜ中継しないのか」という電話が227件も寄せられる騒ぎもあった(朝日新聞、2008年11月18日付朝刊)。
NHKに基準を聞いてみた
実際のところ、中継の有無はどのように決められているのか。J-CASTニュースが31日、NHKに問い合わせたところ、FAXで回答が寄せられた。
広報局は、「国会中継」は「公共放送の政治報道番組として、NHKの独自の編集・編成判断に基いて報道を行っています」とした上で、政治的公平性を確保する観点から、「放送の対応がその時々で異なることは好ましくないと判断し、一定の原則のもとに放送しています」という。
「この原則は、▽本会議の施政方針演説等の政府演説と関連する代表質問を放送する。▽衆参両院の予算委員会の『基本的質疑』のうち、各会派の第1巡目の質疑を放送する。▽さらに、『党首討論』や国民的関心の高い重要案件を扱う委員会の質疑などは、適宜、総合的に判断して放送しています」
この回答から考えると、伊藤さんに関する質疑は1つ目、2つ目の原則には当てはまらない。あとは、3つ目の「国民的関心の高い重要案件」か否かだが、この点はNHKの「編集・編成判断」次第とみられる。