ブリヂストン(BS)が2017年9月に発売した最新のスタッドレスタイヤ「BLIZZAK(ブリザック)VRX2」のマスコミ向け試乗会があった。テストコースはBSの冬タイヤの開発拠点「北海道プルービンググラウンド」(北海道士別市)だ。VRX2はBSにとって約4年ぶりの新型スタッドレスタイヤで、雪上はもちろん、氷上でも前モデルに比べ高いグリップを発揮した。
テストコースでは、前モデルのVRXと最新のVRX2の新旧ブリザックを雪上や氷上で比較することができた。テストカーはいずれもトヨタプリウス(4WD)で、同一コンディションで比較が可能だった。
新旧ブリザッグの違い
テストはBSが用意したプログラムで、まず停止状態からDレンジのままアクセルベタ踏みでフル加速。数十メートル先のパイロンで今度はフルブレーキングして停止する。このほか、左右の複合コーナーなどでハンドリングを確認する。
雪上でアクセルをベタ踏みしても、ホイールスピンを防止するトラクションコントロールがかかるため、速度はさほど上がらない。せいぜい時速40キロといったところだ。だが、このフル加速で新旧ブリザッグの違いがわかる。前モデルのVRXはフル加速で発進すると進路が乱れ、やや左に曲がる。ドライバーはカウンターステアを当てて修正しなければ真っ直ぐに進めない。ところが最新のVRX2はフル加速でも姿勢変化が少なく、わずかなステアリングの修正で直進することが可能だった。
BSによると、フル加速でやや左に曲がるのは、タイヤのトレッドパターンや路面の凹凸などが影響しているという。横置きエンジンにモーターを組み合わせたプリウスの重量配分や駆動系レイアウトの影響もあるだろう。実際の雪道の発進でアクセルをベタ踏みする機会などないが、スタッドレスタイヤの素性を知るにはもってこいだった。
続くフルブレーキングはアイスバーンの上なのでABSが作動。ここでの制動距離や姿勢変化に新旧ブリザックの違いはあまりなかった。カタログ上、VRX2の氷上ブレーキの制動距離は10%短縮されたことになっている。しかし、今回は体感的にVRX2の方が停止までの空走時間を長く感じた。BSによると、グリップに勝るVRX2の方がフル加速で速度が出るため、VRXに比べ制動距離が長くなるのだという。
「路面とゴムの接地面積を最大化した」
雪上のコーナリングはVRXでも不満はないが、VRX2は明らかにグリップが向上しており、フロントタイヤをインに寄せたまま、外に膨らむことなく素直にコーナリングすることができる。コーナリングスピードは時速30キロほどだが、VRXよりもコントローラブルで安心感がある。
ブリザックは日本を代表するスタッドレスタイヤだ。ブリヂストンタイヤジャパンが第三者の調査会社に委託して実施した調査によると、ブリザックは札幌、旭川、青森、盛岡、秋田の北海道・北東北の5都市で一般ドライバーの装着率が45%で、2017年まで16年連続の1位。札幌市ではタクシーへの装着率が73%と高く、数年に一度の新型ブリザックの登場は雪国のドライバーの注目を集める。
VRX2はVRXに比べ耐磨耗性が22%、静粛性が31%向上したという。この二つは今回のテストで確認できなかったが、グリップ性能の向上は体感できた。「発泡ゴム」と呼ばれるBSの独自技術を改良したうえ、新たに非対称のトレッドパターンを採用し、「路面とゴムの接地面積を最大化した」のが効いているようだ。