みずほ証券社長がFGトップに 込められた「象徴的メッセージ」

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   みずほフィナンシャルグループ(FG)が、佐藤康博社長の後任に、証券子会社トップをあてる異例の人事を発表した。佐藤氏が進めてきた「ワンみずほ」戦略を象徴する人事と言えるが、3メガバンクの中で見劣りする収益の底上げにつながるか注目される。

   「負のレガシー(遺産)払拭に、一定のメドがついた」。2018年1月15日、東京都内で記者会見を開いた佐藤氏は、みずほ証券の坂井辰史社長にバトンを渡す理由をこう説明した。

  • みずほ証券社長がFGトップに
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「負のレガシー」と「旧3行」意識

   佐藤氏が言う「負のレガシー」とは、みずほの前身である日本興業、富士、第一勧業の「旧行意識」に他ならない。旧3行が経営統合してみずほFGが誕生した後も、FG傘下には二つの銀行がぶら下がり、FGと2行のトップを旧3行で争うという旧態依然とした体制が続いた。

   旧3行による激しい派閥抗争が繰り広げられ、FG内の情報共有や連携が滞った結果、不祥事が頻発した。経営統合直後の2002年と、東日本大震災発生後の11年の2度にわたって大規模なシステム障害を起こしたほか、13年には提携ローンによる暴力団への融資が発覚。暴力団融資問題では、経営陣が問題を認識していながら放置していたことも判明し、みずほFGのコーポレート・ガバナンス(企業統治)の欠如が浮き彫りになった。

   2011年にFG社長に就任した佐藤氏は、数々の不祥事の根底には根強い旧行意識があるとして、「ワンみずほ」を掲げて改革に取り組んできた。13年に傘下の2行を合併させて1行体制に移行。16年には、銀行、信託、証券などのグループ会社を横断して顧客別に五つの社内カンパニーを設け、グループ一体運営を強化した。組織の上では「ワンみずほ」の体制が整い、今回のトップ交代につながったと言える。

「ワンみずほで収益を上げていく」

   佐藤氏は記者会見で「証券会社の社長がグループトップになることは非常に大きな意味がある」と述べた。マイナス金利政策の影響で、銀行の本業である融資によるもうけが伸び悩む中、株式の引き受けやM&A(企業の合併・買収)仲介といった証券業務が、より重要な経営の柱となり得るからだ。坂井・みずほ証券社長の抜擢は、「ワンみずほで収益を上げていく」という佐藤氏の象徴的なメッセージと言える。

   その坂井氏は銀行トップこそ未経験だが、銀行では企画部門や投資銀行業務を担当し、「FGの中核業務に精通している」(みずほFG幹部)。早くから「将来のFG社長候補」と目されてきた期待の星だ。

   しかし、新社長の前途は険しい。みずほFGの2017年9月中間連結決算の純利益は前年同期比11.6%減の3166億円。三菱UFJFGの6269億円、三井住友FGの4202億円と比べて少ないだけでなく、3メガバンクで唯一の減益だった。「稼ぐ力」の低さは明らかで、底上げが急務だ。

   収益力アップに向け、佐藤氏は昨秋、業務のIT化により1万9000人を削減するなど、10年先を見据えた改革も打ち出した。佐藤氏が描いた「ワンみずほ」の体制に魂を吹き込み、証券業務の拡大や経費削減で収益を底上げできるのか。坂井氏に課せられた課題は重い。

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