ローカル私鉄めぐる恐ろしい指摘 脱線事故で運輸安全委が「異例見解」

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   和歌山県の紀州鉄道と熊本県の熊本電鉄で2017年に相次いだ脱線事故で、国の運輸安全委員会が異例の見解を出した。いずれの事故も、レールとレールの間が広がりすぎていたことが原因で、委員会の報告書では、定期検査で脱線の危険性を把握できていなかった可能性も指摘された。

   その上で、「地方鉄道に共通する課題」として、事業規模が小規模なために「組織としての技術力を維持、向上が困難」だという状況が続いていることが背景にあるとの見方を示した。

  • 枕木は木製よりもコンクリート製の方が耐久性が高くメンテナンスしやすい(写真はイメージ)
    枕木は木製よりもコンクリート製の方が耐久性が高くメンテナンスしやすい(写真はイメージ)
  • 枕木は木製よりもコンクリート製の方が耐久性が高くメンテナンスしやすい(写真はイメージ)

レールとレールの間が広がりすぎたことが原因

   脱線事故は17年1月に紀州鉄道、2月に熊本電鉄で起き、それぞれの調査報告書が18年1月25日に公表された。いずれの事故もカーブを曲がる途中で起き、けが人や周辺の住宅への被害は出なかった。報告書では、いずれもレールとレールの間が広がりすぎていたことが原因だとみている。

   2つの事故の分析には共通点が多い。熊本の事故では、定期検査でレールを枕木に固定する部品(締結装置)の不良や、レールの間が拡大する危険性を把握できなかった可能性があり、それに応じた整備が十分に行われなかったことが間接的に事故につながった可能性を指摘している。紀州の事故では、定期検査で枕木の不良は把握していたものの、それが締結装置の不良につながる危険性を十分に把握していなかった、とした。

「保線担当者個人ごとの業務遂行能力の問題というよりは」...

   事故当時の保線担当者数は紀州が3人、熊本が4人。路線の長さがそれぞれ2.7キロ、13キロと短いことから、報告書では「決して少なすぎることはない」と評価している。その上で、背景にある「地方鉄道に共通する課題」を指摘した。

「規定に従った一定の線路の保守ができていたことから、保線担当者個人ごとの業務遂行能力の問題というよりは、同社に類する地方鉄道に共通する課題として、鉄道事業が小規模であるために、組織としての技術力を維持、向上が困難であることが考えられ、同社においては、そのような状況が継続していた可能性ある(原文ママ)と考えられる」

   上記は熊本電鉄の報告書の記述だが、紀州鉄道の報告書にもほとんど同じ記述がある。再発防止には社員教育や適任者の増員が有効だとしながら、枕木を木製のものから耐久性が高くメンテナンスがしやすいコンクリート製のものに交換することが「即効性、確実性」があるとしている。

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