楽天が米小売り最大手のウォルマート・ストアーズとの提携を、2018年1月26日に発表した。日本国内では、ウォルマート子会社の西友と共同でネットスーパー事業を立ち上げる。
ネットショッピングにおける生鮮食品の割合はまだ低く、市場拡大の期待は大きい。競合する米アマゾン・ドット・コムは首都圏の一部で既に野菜や鮮魚のネットスーパー事業を始めており、真っ向から対峙することになる。
今年7~9月をめどにスタート予定
楽天とウォルマートの提携により、国内で2018年7~9月をめどに「楽天西友ネットスーパー」がスタートする予定だ。また米国では、ウォルマートが運営する電子商取引(EC)サイトで楽天が取り扱う電子書籍やオーディオブックを販売することも合わせて発表された。楽天の三木谷浩史会長兼社長は、今回が提携の第1弾であり「さまざまな分野において新たな取り組み」をしていくと話した。ウォルマートのダグ・マクミロン社長兼最高経営責任者(CEO)は「楽天とは文化的に共通する部分が多く、一緒にできることを非常にうれしく思っています」と語った。
新ネットスーパーでは、西友の店舗から生鮮食品や日用品を配送するほか、年内には専用の配送センターを設置する。カット野菜や半調理食品、食材がセットになってすぐ調理できる「ミールキット」の品ぞろえを強化していく。現在楽天は「楽天マート」、西友は「SEIYUドットコム」と、それぞれネットスーパーを運営しているが、いずれも今後新スーパーに統合していくという。
西友の上垣内猛CEOは、買い物や料理の時間短縮を求める消費者のニーズが高まっていると説明。生鮮食品のネット購入が増えてきてはいるがまだ少なく、市場の成長が期待できるとした。西友に「ウォルマート流」が取り入れられて15年、新ネットスーパーでもこれまで培った低価格や品質管理といったノウハウや物流網を生かせると自信をのぞかせた。
三木谷社長は、今後商品の共同開発や、仮想商店街「楽天市場」で売り上げ上位の人気商品を新ネットスーパーで販売するような広範囲での展開を構想していると語った。
日本のEC市場でアマゾンと楽天が「2強」
楽天とウォルマートの提携の背景にあるのは「対アマゾン」とみられる。日本貿易振興機構(ジェトロ)が2017年7月31日に発表した「ジェトロ世界貿易投資報告」に書かれている「各国のEC市場シェア(2016年)」を見ると、日本では首位がアマゾン(20.2%)、2位が楽天(20.1%)だが、その差はわずか0.1%だ。しかも3位のソフトバンク(Yahoo!ショッピング)のシェアが8.9%なので、国内では上位2強の競争と言える。一方米国では、首位アマゾンが33.0%で、2位ウォルマートの7.8%を大きく引き離している。楽天とウォルマートにとっては、アマゾンは「共通の敵」になっている。
会見で三木谷社長は、競合他社については言及を避け、「インターネットは新しい生活のインフラになっている。世界的に見ると(ネットで)日用品や食品も買う時代になってきた。こうした消費者のニーズにこたえていくことが我々の責任」と話した。
ただ、今回進出した分野は既にアマゾンが始めている。17年4月21日にスタートした「アマゾンフレッシュ」だ。配送地域は、開始当初の東京都内6区から、現在は都内18区2市に加えて神奈川県と千葉県の一部と範囲を広げている。日用品や生鮮食品を中心に24時間注文を受け付け、朝8時から深夜0時までの間に最短4時間で届ける。米国で07年に始めたサービスで、英国でも展開しておりノウハウは蓄積されている。
楽天としては、「伸びしろ」が期待できる国内ネットスーパー事業で、国内でのリードを許すわけにはいかない。ウォルマートという強力なパートナーを得て、国内EC市場首位の座を奪い返すため攻勢をかけたいところだ。