共同通信が京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長について報じた記事とその後の大幅変更が、ツイッターなどインターネット上で物議を醸している。
ネット上で記事への疑問の声が続出した後、同社は記事の見出しと本文の根幹部分を含む記載を大幅に変更し、変更した旨の記載もないことなどから、「酷すぎない?」と批判を浴びることとなった。
「印象操作」ではないか
共同通信は2018年1月25日の日中、「山中氏、科学誌創刊に深く関与か 京大、iPS研の論文不正」とのタイトルで記事を配信。京都大iPS細胞研究所の助教が不正な論文を発表した問題を受け、問題の論文を掲載した米科学誌ステム・セル・リポーツの創刊に当時、国際幹細胞学会の理事長を務めていた山中氏が深く関わっていた、と報じた。
記事はその上で、「この論文の審査に山中氏は関与していないとみられるが、現在も編集委員の一人となっている。一般的に科学誌の論文審査制度に対しては、不正を見抜く仕組みが不十分だとの声もある」などとした。
この記事には、ツイッターなどインターネット上で「創刊に関わることと不正論文が掲載されたことにどういう関係があるのかね...」「問題の論文を査読したのが山中先生でないのでしたら、少なくとも彼の責任を追及するのは筋違いです」との指摘が相次ぐことに。
ツイッターでは、「記事では創刊に関わっていたことを強調しており、これは『印象操作』ではないか」といった受け止め方をした人から批判が出て、
「共同通信はこの記事を撤回して謝罪すべきです」
「出来る限り早く記事を取り下げて謝罪した方がよい案件 放置すればするほど傷が深くなる気が......」
との声も上がった。
だが共同通信は記事は撤回せず、同日夜に記事の見出しを「山中所長が給与全額寄付 京大iPS研、論文不正」に変え、本文も半分以上、大幅に変更。「山中氏が雑誌の創刊に関わっていた」云々の記述はすべて削除し、不正論文問題で山中氏が当面の間、給与を研究所に全額寄付するとの考えを示していることが分かった、との内容に差し替えた。変更した旨の記載は26日夕現在、見当たらない。
「もはや研究不正や捏造を取材する資格がない」
こうした共同通信の対応をめぐって、ツイッターなどインターネット上では、
「おいおい......同じurlで見出しも記事も全然違うんですけどナニコレ酷すぎない?」
「ホントだ、URL同じままでタイトルと記事の本文すり替えてる」
と批判の声が殺到した。
「共同通信社には、もはや研究不正や捏造を取材する資格がないと思う」
「通信社がこんな無責任な記事配信をするなら、配信して欲しくない新聞社が出てくるのではないか?」
「昨年ぐらいから新聞社・通信社の報道が著しくおかしくなってきてる感ってないですか?」
など、批判の矛先はメディア業界全体にも向いている。
実際、共同通信の記事を配信する地方紙では、西日本新聞の1月25日付夕刊が「科学誌創刊 山中氏関与 不正論文掲載」の見出し、静岡新聞の同日付夕刊が「不正論文掲載誌 創刊に山中氏関与-iPS研究」の見出しでそれぞれ、共同の変更前記事と同じ内容を掲載している。
J-CASTニュースは26日昼、今回の件に関して共同通信に取材の質問状を送付しているが、26日16時すぎまでに回答は届いていない。
(追記)共同通信の総務局は2018年1月26日17時30分、J-CASTニュースの取材に「新たな要素を加えて記事を差し替えました。編集上、必要と判断しました。その他についてはお答えは控えさせていただきます」とファクスで回答した。