「権利元に無許可でコピー・改変されたものが『大々的』に『販売』されたから」
よく誤解を受けるのは、作風(タッチ)自体は著作権は持たないことから、「影響」や「パクリ」と呼ばれるものは著作権侵害にはあたらないこと、また「模写」(見て描き写す)や「トレース」(上からなぞる)も、絵の練習に必要なことであり、その行為自体は問題ではございません。カラーコピーを近所に配るのはちょっと問題になります。そして今回問題になったのは、ハシヅメさんにより、藤子F作品のキャラクターやコマを、権利元に無許可でコピー・改変されたものが『大々的』に『販売』されたからだとご認識ください。この違いは、少数の子供が公園で、友達同士で遊びでサッカーをしていて、そこでハンドしても、「しょーがねーなー(笑)」で済まされますが、きちんとした試合では反則になる、という風に捉えると解りやすいかもしれません。詳しくは私の一連のTwitterや、自身のインターネットラジオ(0:24:00~1:25:00辺り)で詳しくお話しさせて頂いてておりますので、そちらもあわせてご参照ください。
今回起こったことはアマチュア、プロを含めたクリエイターにとっても、それを育てるファンにとっても、危惧することであり、同時にまだ日本で曖昧な認識である著作権を考えるよい機会にもなったと思いますが、小学館集英社プロダクション様、カッティングエッジ様、並びに各担当者様、担当責任者様は、たいへん難しいスケジュールや様々な関係性の中、あの場においては最大限に誠実なご対応だったと、ただただ頭の下がる思いです。ここで更に、インターネット上で読ませるために必要な最小文字数において、結果的にキャッチーにせざるを得ない記事で、見出しや上澄みのみの誤解が拡散されると、不必要なバッシングや噂を立つことの方がより危惧されますので、このように異例で早急にジャケットが改変になった時点で、何も言わずとも、理解できる人は理解し、感じる人は感じ、考える人は考え、これにて、今回の件については、もう結果を受け止めることこそが誠意だというのが率直なところです。
最後に、音楽や漫画と比べ、著作権の認識も含め、日本のイラストレーションを取り巻く環境はまだまだ発展の余地があります。はじめの例で出したサッカーのように、最大限に楽しむことは同時に、最低限のルールを守ることでもあります。今後も、まだ曖昧な一線をみんなで「あぁだこうだ」と決めながら、一緒に未来の楽しい日本文化が築いていけることを切に願っております。
本日はお忙しい中、長い文章にお付き合い下さり、ほんとうにありがとうございました。
2018年1月25日 イラストレーター・中村佑介