恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』、快進撃が続く 図書館に予約が殺到「借りられない」

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   人気作家・恩田陸さんの小説『蜜蜂と遠雷』の快進撃が続いている。2016年9月の発売だが、直木賞と本屋大賞のダブル受賞で弾みが付き、17年の年間ベストセラーでは堂々3位に(トーハン調べ)。すでに14刷57万部。音楽コンクールが題材になっていることもあって、作品に関連したCDが次々と発売され、作品を軸にしたコンサートまで開かれている。

   主要な図書館ではたいがい予約リストのトップで長い順番待ち。ミリオンセラーの『九十歳。何がめでたい』をはるかに上回る人気が続いている。

  • 蜜蜂と遠雷(著:恩田陸 幻冬舎 画像はアマゾンから)
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構想12年、執筆7年

   『蜜蜂と遠雷』は、クラシック音楽に詳しい恩田さんが、実際に国際音楽コンクールを取材して書き上げた渾身の大作だ。構想12年、取材11年、執筆に7年かかったという。

   小説の舞台も日本で開かれる国際ピアノコンクール。3次の予選と本選を勝ち抜いて誰が優勝するのか、音楽ファンでなくても手に汗握るストーリーになっている。

   17年に入って1月に直木賞、4月に本屋大賞を受賞。両賞のダブル受賞は初めてということで注目を集めた。5月には早々と、「蜜蜂と遠雷 音楽集」という二枚組のCDが発売され、6月に「『蜜蜂と遠雷』ピアノ全集[完全盤](8枚組CD)」、さらに10月にも「蜜蜂と遠雷 その音楽と世界」というCDが発売された。いずれもショパンやプロコフィエフなど作品に関係するピアノの名曲を集めたものだ。

   18年に入ると、作品の朗読とクラシックの演奏をコラボした大型コンサートも。東京のオーチャードホールの公演は終了したが、大阪では1月27、28日、森ノ宮ピロティホールで予定されている。

人を不快にさせるような要素がない

   快進撃の余波は図書館にも波及している。どこの図書館でも予約が殺到し、「借りられない」状態が続いているのだ。

   東京・港区の図書館ではこのところ3か月連続で予約ランキングの1位。1月19日現在で817人が順番待ちをしている。区内の図書館には合計23冊しか置いてないから、借りられるのは相当先、来年になりそうだ。買う方が早い。『マスカレード・ナイト』、『コンビニ人間』、『騎士団長殺し』なども予約が多いが、『蜜蜂』とはかなりの差がある。『九十歳。何がめでたい』は10位以下だ。

   東京・八王子市の図書館でも、1月19日現在の予約順位では『蜜蜂と遠雷』がダントツのトップ、大阪市の公立図書館では約1800人が順番待ちで、他作品を圧している。発売から3年目に入っても、これだけの人気を続けるのは異例だ。

   「小説から音楽が聞こえてくる」といわれるほど、多数の名曲が登場し、それぞれについての描写も巧みだ。コンクール出演者の孤独や苦悩も掘り下げられているので、小説好きだけでなくコアなクラシック音楽ファンにまで読者層が広がっているようだ。

   CD「蜜蜂と遠雷 音楽集」を出したナクソスの特設サイトでは、本書の担当編集者、幻冬舎の志儀保博さんが恩田さんとの長い付き合い、出版までの辛抱の日々を明かしており、ファンにとっては興味深い。志儀さんは作品の魅力についてこう語っている。

「この物語は人も死なないし、いじわるな人もいないし、あまり人を不快にさせるような要素がないことがたくさんの人に受け入れられた理由かなと思っています」
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