草津白根山(群馬県)の噴火口は、気象庁が発表した地点ではない――。12人が死傷した草津白根山の噴火をめぐり、火山学者の一部がインターネット上でそう指摘している。
一方、東京工業大・草津白根火山観測所の野上健治教授は記者会見で、噴火口が少なくとも2カ所あると述べた。
「この国唯一の火山監視機関が...」
噴火は2018年1月23日9時59分に発生した。気象庁は同日、噴火は草津白根山の本白根山の山頂近くにある「鏡池」付近で発生したと発表。東京工業大学の観測によれば、鏡池付近から1キロメートル以上飛散する噴石が確認されているとし、「本白根山鏡池付近から概ね2キロメートルの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください」と注意を呼びかけた。
これに対し、群馬大の早川由紀夫教授(火山学)は1月23日夜のツイッターで
「気象庁が噴火したと言ってるらしい鏡池と本当の噴火口は500メートルも離れている」
と異なる見解を示した。噴火は鏡池から北に数百メートル離れた、他の火口から起きたに違いないという。「500メートルといったら噴火口から山頂駅までの距離と同じだ。この国唯一の火山監視機関がこういう基本を理解できないまま夜を越すなんて、私は信じられない」
一方、テレビや新聞などのメディアは、各社とも気象庁の発表内容をそのまま文章にしており、鏡池を噴火口として現場付近の地図を作成していた。早川教授はこれにも
「NHKさんは、『噴火したのは鏡池』だとゆってる」「朝日新聞も、鏡池を今回の火口として、そこを中心とした同心円を描いている。あーあ」
などと注文をつけた。
火山学者で静岡大学防災総合センターの小山真人・副センター長も24日、ツイッターで
「今回噴火したのは鏡池火砕丘ではなくて、その北に隣接してスキー場寄りにある鏡池北火砕丘です。現状すべてのメディアが図やCGで火口を鏡池に置き、誤って伝えています」
と指摘。早川教授はこのツイートを「リツイート」し、「テレビ新聞をなじるのはかわいそう。悪いのは気象庁」と投稿した。
気象庁「はっきりとしたところは分かっていない」
気象庁が今回、噴火口は鏡池付近だと発表した根拠は何だったのか。同庁・火山課の担当者は24日のJ-CASTニュースの取材に、
「噴火口の場所は把握している最中で、はっきりとしたところは分かっていない」
とコメント。その上で、
「東京工業大の野上健治教授が噴火後、鏡池付近から噴煙が上がる様子を確認した。こちらはその情報をもとに、鏡池付近が噴火口だと発表した。天候も悪いので見通しすら立っていないが、いずれ現地調査で(噴火口を)明らかにする」
と説明した。
その野上教授は24日夕、草津町役場で開いた記者会見で、噴火口は少なくとも2か所あるとの見方を示した。J-CASTニュースは大学の広報室を通じ、24日から野上教授に取材を申し込んでいるが、25日夜までに返事はきていない。
一方、気象庁は24日16時45分に公表した草津白根山の火山活動を報告する資料に、鏡池を中心とする半径2キロの同心円を加えた現場付近の地図を掲載している。
早川教授はこれに対し、24日のツイッターで
「きょう1645の解説資料でこういう図を出してはまずいでしょう、気象庁さん」「なんで鏡池からなの?」「そんないい加減で、ひとの命をもてあそぶんじゃないよ!」
と苦言。翌25日にも、
「気象庁がああなのは、本白根山に登って鏡池を訪れたことのある職員がいないからだろう。ふだんから火山に親しんでると、こういうとき役に立つ」
と投稿した。