予算の重点配布は、どの研究が優れているか予め分かっていることが前提
しかし、今の財務省はこの教育国債を決して認めない。筆者が、昨2017年5月に自民党本部で教育国債を説明すると、同じ時に財政審議会を開いて教育国債を否定し、マスコミにそれを報じさせるという具合だ。
ネットでも教育国債の批判ばかりが目立つ印象である。書いている人はほとんど財務省の応援者ばかりだ。
実は、本来恩恵を受けるべき大学関係者からも、教育国債を支持する声は聞こえてこない。大学関係者の中には、役所の審議会委員も多くいるが、財務省への「忖度」があるのかもしれない。筆者の邪推でないことを祈るばかりだ。
実際の教育・研究開発予算では、投資という考え方は否定されている。投資と考えるなら、一定の予算を広く与え成果を待つ。しかし、今の予算では、「選択と集中」といい、税財源による少ない予算を重点的に配布する、となっている。
これは、どの研究が優れているか予め分かっていることが前提であるが、そんなものは、やってみなければ分からない。まして、文系官僚が、どれが優れた研究なのか分かるはずがない。
教育国債があれば、日本の教育・研究開発予算は今より年間数兆円も増額することができるので、教育・研究環境は格段によくなり、結果として研究不正も減るのではないだろうか。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「朝鮮半島終焉の舞台裏」(扶桑社新書)など。