日本語ラップの草分けの1人として知られるヒップホップミュージシャンのECD(本名・石田義則)さんが2018年1月24日、死去した。57歳だった。遺族が本人のツイッターを通じて25日朝に報告した。
ECDさんは2016年9月のツイッターで、大腸と食道に進行性のがんが見つかったことを公表。闘病生活を送りながらも、音楽活動を続けていた。今回の訃報にツイッターでは、音楽仲間や関係者から追悼のコメントが上がっている。
「家族と友人達に見守られながらの最期でした」
ECDさんの訃報は1月25日朝8時過ぎ、本人のツイッターアカウントで伝えられた。投稿では「家族による代筆です」として、
「昨夜21時36分、ECDこと石田義則は入院先の病院で息を引き取りました。家族と友人達に見守られながらの最期でした。これまで応援してくださった皆さんには深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました」
と報告した。告別式などについては、決まり次第改めて告知するという。
ECDさんは1987年、ラッパーとして音楽活動を開始。ヒップホップコンテスト「CHECK YOUR MIKE」を主催するなど黎明期の日本語ラップシーンを牽引し、90年にシングル「Picocurie」でデビューした。
96年には、RHYMESTERやキングギドラなど当時の日本語ラップシーンを代表するアーティストを集めたイベント「さんぴんキャンプ」をプロデュース。これは、当時としては最大規模の日本語ラップイベントで、後のシーンにも大きな影響を与えたとされる。
近年は、反原発運動や反レイシズム運動にも積極的に参加していた。2014年には「C.R.A.C.」(旧・レイシストをしばき隊)らとコラボした楽曲「Antifascist Railroad(アンチファシスト・レイルロード)」を発表している。
16年9月には進行性のがんを患ったことを告白。17年3月には闘病生活を追ったドキュメンタリー作品「がんばれECD」がYouTubeで公開され、注目を集めた。
Zeebra「一生FRESHでした」
日本語ラップの草分けの1人としても知られるECDさんの訃報に、音楽関係者らからはツイッターに追悼のコメントが相次いでいる。ラッパーのZeebraさん(46)は、「♯ecd4ever」のハッシュタグ付きで、
「常に新しいヒップホップを表現した石田さんは一生FRESHでした。ご冥福をお祈りします」
とツイート。ラッパーのPUNPEEさんも、「ずっとFreshでいるなんて夢の様なことだけどずっとFreshに見えていた。姿勢を正された。ありがとうございました!」とコメントしている。
音楽雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」元編集長で音楽評論家の鹿野淳さんは、
「ECDさんが亡くなりました。ヒップホップを開拓したということは、日本の音楽全体に大きな可能性をもたらしたわけで、日本のポップ・ミュージックの大きな立役者の1人でした。残念でなりません」
と生前の功績を称えた。
そのほか、精神科医の香山リカさん(57)は「ECDとは1960年生まれの同級生。ハタチの頃から何度かすれ違ったり再会したりを繰り返した。悲しい。感謝。がんばる。つらい。また会える。さびしい。感情と言葉がまとまらないよ」と悲しみに暮れた。
また、立憲民主党の有田芳生参院議員(65)は、
「静謐な佇まいに秘められた闘志をヘイトスピーチの現場や国会前などでお見受けしてきました。都知事選のとき、新宿の歩行者天国で、独り、のぼり旗を手に屹立していた姿を思い出します。お疲れさまでした」
と追悼のツイートを投稿。16年8月に解散した学生団体「SEALDs」で中心メンバーだった牛田悦正(よしまさ)さんも、「ECDさん。ありがとうございました。かっこよかったです。永遠にリスペクトして生きていきます」との思いをつづっている。