想定を上回る大勢の利用客が早めに駅に来た
最初に回答してくれたのは、東急電鉄だ。広報部によると大雪対策は「多岐にわたります」。ごく一部だが、対応する職員の増員、融雪剤をまく、線路が凍らないように回送電車を走らせる、といった例を挙げた。
次に大雪時は電車が滑りやすくなり、運転時の視界が悪くなるため、安全を考慮して徐行運転する規定があると説明。運行本数を減らすのも、安全のためだ。1月22日のケースでは、早めの帰宅を目指した利用客が集中し、乗りきれない多くの人があふれた。各駅で同じような事態が起き、電車を待つ人は増える一方。ただでさえ通常より少ない運行数、しかもゆっくり運転なので、遅延につながってしまった。東急電鉄では「安全上、速度を落としての運転が必要となります。どうかご理解ください」とのことだった。
西武鉄道広報部からも、早々に回答が届いた。積雪・降雪に備えて準備している道具や機械には、線路のポイントの融雪器、踏切やホーム上に散布する融雪剤、山岳路線降雪状況監視のためのカメラ、除雪機、スコップや長靴の常備がある。また降雪時に備えて、車両上(パンタグラフ)の除雪訓練や特殊な運転の訓練、また脱線復旧等を含めた「総合復旧訓練」を毎年実施。1986年3月23日、西武新宿線田無駅で大雪の影響により列車の追突事故が発生、多数の負傷者を出した。同社の「事故情報展示室」には当時の状況や、対応にあたった職員のコメントが記録されており、職員の講習に役立てている。
雪対策に力を入れていることは間違いない。それでも遅延が発生するのは、やむを得ないのか。同社は最初に「電車の遅れ・運休が発生し、お客さまにはご迷惑をおかけします」とした後、「対策は講じておりますが、安全を最優先に運行しておりますので、降雪によりブレーキがかかりにくい時は速度を落とした徐行運転をしたり、ホーム上にお客さまが多くいらっしゃる場合は発車までお時間がかかってしまったり、駅構内への入場を規制させていただくこともございます」と説明した。すべての対策は乗客の安全確保のためであり、「今後ともご理解・ご協力いただければと思います」とコメントした。
東京メトロの場合、大幅な遅延や相互直通運転中止、運休の恐れが出たら、公式ウェブサイトやツイッターで周知する。地下鉄でも一部地上を走る電車があり、線路凍結を防ぐために地上部の全駅に電気融雪器を作動させると、広報部は答えた。夕方のラッシュ前に運行本数を増やしてラッシュ時に過度に客が集中するのを防ぎ、営業終了後には除雪用の臨時列車を走らせて電車線に雪が積もって凍結するのを防ぐ工夫もしている。
1月22日も、ラッシュ前から運行本数を増やして準備した。しかし想定を上回る数の人が早めの時間に家路についたため、駅が混雑した。安全のために運行スピードを落とし、また相互直通運転をしている他社線でも同様の措置を取ったことから、大きな遅れにつながったとみる。