米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、交流サイト(SNS)「フェイスブック」上に掲載するニュース記事の取り扱いルールの変更を宣言した。
同社は米大統領選の際、いわゆる「フェイクニュース」を拡散させたとして批判を受けた。頭を痛めてきた偽情報の撲滅に、トップ自ら大胆に動いた。
ニュースの信頼性は利用者の判断にゆだねる
「今日の世の中には、センセーショナリズムやウソ情報、分断による対立が多すぎる。SNSにより、人々に情報が拡散するスピードは増したが、こうした(ウソ情報などの)問題に取り組まないと、我々がこれらを助長させる結果となってしまう」
ザッカーバーグCEOは2018年1月20日、自身のフェイスブックにこう書いた。だからこそ、フェイスブック上に表示される記事の品質を考慮しなければならないというのだ。
個人が利用するフェイスブックのページでは、「ニュースフィード」と呼ばれる中央部分に、利用者自身の「友達」や、興味をもって「いいね」をしたページの投稿内容が流れる。今回の改善では、メディアを名乗る投稿者が流す内容について、信頼性、情報の有益性、地域性に優れた投稿を優先してニュースフィードに表示し、利用者の目に触れやすくさせる。
では誰が優先順位をつけるのか。ザッカーバーグCEOは「我々(フェイスブック)が担うのは、心地の良いものではない」とした。そこでニュースの信頼性は利用者の判断にゆだねる。19日付のフェイスブック社の発表によると、同社が実施した全米規模の利用者調査の結果から、数多くのニュースソースにおける親しみやすさや信用度の高さといった尺度をもとに順位を決める。
情報の有益性の評価づけは、2016年8月以降、同社が利用者に協力を求めてきた。今後もさらに情報を集めていくという。地域性についても、より地元のニュースに接しやすくなるよう改善を続けるとした。
米右派ニュースサイトが敏感に反応
2016年の米大統領選で、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏を攻撃する大量の投稿が、フェイスブック上にばらまかれた。さらにロシアが関与したとみられる、米社会の分断をねらったような広告も多数、掲載された。人種問題や銃規制、LGBTといった社会の意見が分かれるテーマを選んでいる。このため、「反トランプ大統領派」の人たちを中心に、フェイスブックは厳しく批判された。巨大SNSにより、偽情報が拡散されたというわけだ。
米ニューヨークタイムズ(電子版)は18年1月19日付記事で、メディア事業者団体「デジタル・コンテント・ネクスト」のトップのコメントを載せた。今回のフェイスブックの試みを、改善の第一歩として望ましいと受け止めつつも、フェイスブック側が決める順位が信頼に足るのか懸念を示した。信頼性の評価を下す利用者の意見そのものが改ざんされやすいのではないか、との疑念だ。また国や地域によっては、政府がメディアをコントロールし、独立系が非合法とされることもある。その場合、本来は信頼できるはずのメディアが検閲されたり、政府から不法と決めつけられたりした場合はどう判断するのか。
今回の措置を報じたメディアは多いが、敏感な反応を示したのが米右派系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」だ。1月20日付記事で、「こうすれば常にニュースフィード上で当ニュースが読めます」と、図解したのだ。このサイト、トランプ大統領の側近中の側近といわれたスティーブン・バノン氏が2012年から今月上旬まで会長を務めていたことでも知られる。
確かにニュースフィードは設定によって、利用者自身が表示コンテンツを管理できる。記事では「ブライトバート・ニュースは、利用者とのつながりが強いフェイスブックページトップ10のひとつ」と誇っているが、読者にわざわざ「設定の呼びかけ」をしたのは、運営側で順位を下げられるのを恐れたのだろうか。