2018年2月に韓国・平昌で開幕する冬季五輪が、さらに「平壌五輪」化しそうだ。1月17日に行われた南北実務者協議で、南北選手が合同で北朝鮮東部にある馬息嶺(マシクリョン)スキー場で合宿を行うことで合意した。このスキー場を北朝鮮が「猛プッシュ」しているためだ。
米NBCテレビの看板キャスターが、このスキー場から「近代的なスキーリゾート」などとリポート。米国で平昌五輪の放送権を持っているのはNBCだ。北朝鮮にとっては、金正恩委員長が自慢するスキー場を宣伝する絶好の機会になったと言えそうだ。
「馬息嶺速度」で突貫工事
馬息嶺スキー場は13年12月にオープン。突貫工事で建設されたことで知られ、国営メディアは正恩氏が建設現場で指導する姿を繰り返し伝えた。国営メディアでゃ一時期、速度戦を指す「馬息嶺速度」という単語がおどったほどだ。
NBCテレビは1月21日(日本時間)、看板番組とも言える「ナイトリーニュース」でキャスターを務めるレスター・ホルト氏の現地リポートを放送。観光客がスキーを楽しむ様子を背景に、
「近代的なスキーリゾートで、モニターでは愛国的な歌が流されている」
「人々に話を聞いてみると、南北が競争するだけではなく対話が進むという期待感から、わくわくしている様子だった」
などと中継で伝えた。
北朝鮮はスキー場のオープン前から五輪会場としての活用を呼びかけており、今回の合意は「してやったり」だ。ただ、韓国側からは批判も出ている。
合宿に参加するのは国家代表ではなくスキー協会所属の一般選手
中央日報は1月19日、
「五輪を控えた合同練習というが、参加の対象は国家代表ではなくスキー協会所属の一般選手だ。スポーツとはいかなる関係もない政治行事であることをそのまま見せている」
などとして、合意は五輪とは無関係な政治利用だとして非難。朝鮮日報は1月18日の社説で、
「国際大会を開催できるようなレベルにはない」
と、スキー場のスペックを疑問視した。
北朝鮮側も「反撃」した。朝鮮中央通信は1月21日、両紙を名指ししながら
「われわれが取っている措置と誠意ある努力に対して『隠遁国家を正常国家』に誇示してみようとする措置、『体制宣伝のためのもの』『偽装平和攻勢』と悪態をついている。はては、われわれが共同訓練のために提供する馬息嶺スキー場と葛麻(カルマ)空港(編注:スキー場の最寄り空港。元山=ウォンサン空港としても知られる)に対しては『古びて不備な設備』『危険な場所』などとけなしたあげく、誰それの『功績』宣伝のためのものだとあえて謗っている」
などと非難し、両紙の指摘は
「民族の統一的発展を阻み、外部勢力に漁夫の利を与えようとする反民族的行為としか見られない」
とした。