岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
「糞の穴」発言の大統領を擁護する声

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

FOXニュースのコメンテーターは...

   エバリンをはじめ多くのトランプ支持者は、FOXニュースから情報を得ている。同ネットワークのコメンテーター、ジェシー・ワッターズ氏は、今回のトランプ氏の発言についてこう話している。

「忘れられ見放されたアメリカ人男女は、そんなふうにバーで話しているんですよ。トランプはそういう人たちに共感できるんです。ウィスコンシン州にハイチやエルサルバドルから移民がたくさんやってきたら、バーでそんなふうに話す人たちはいますよ」

   米中西部にあるウィスコンシン州は、白人の比率が86%と高い州だ。ここで留学経験のある私は、このコメントを完全に否定できないが、本音をしゃべらせたら、リベラル派が多数を占めるニューヨークやサンフランシスコでも、似たような発言をする人はいるだろう。だが、トランプ氏は単なる一市民ではなく、アメリカの大統領だ。

   同じくFOXニュースのコメンテーター、タッカー・カールソン氏も、トランプ氏を擁護する。

「トランプの発言は、アメリカ人の誰もが思っていることです。かなりの数の移民が、危険で、汚く、腐敗し、そして貧しい国からやってくる。それがまさにアメリカにやってくる主な理由です。同じ立場だったら、あなたもそうするでしょう」

   しかし、そういう言葉を自分の国の大統領が口にしたことに、反トランプ派は強い反発や嫌悪感を覚えている。

   ニューヨーク市マンハッタンのタイムズスクエアで行われた抗議集会に参加したアフリカ系アメリカ人のロバート(43)は、「トランプ支持者は、ただ手をこまねいて見ているだけだ。なぜ、人種差別発言だと批判し、立ち上がろうとしないのか。同じアメリカ人として情けない」と訴える。

   一方、トランプ氏を支持するマイケル(26)は、「トランプは人種差別主義者ではない。アフリカ系も含めてアメリカ人の利益を優先するために、移民を規制しようとしているだけだ」と弁護する。「だいたい、リベラル派は偽善的だ。大統領選でトランプが勝ったら、リベラル派はカナダやスペインに移住すると言っていただろ。アフリカやハイチに移住したらどうだい?」

   トランプ氏が大統領に就任してちょうど一年が過ぎた。

   「この一年間で、アメリカこそ、SHITHOLEになってしまった」と嘆く反トランプ派。

   トランプ氏に投票したことを後悔する声も聞かれるが、今も変わらず自分たちが投じた一票に希望を託し、大統領を信じ、支持し続ける人たちがいる。(敬称略。随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。


1 2
姉妹サイト