犯罪が減ったのは警官が増えたから?
米公共ラジオ局「NPR」電子版の2016年11月1日付記事によると、ジュリアーニ市政の地下鉄の環境改善運動として、無賃乗車、マリファナ使用、違法タバコの販売、そして車両への落書きの徹底取り締まりが行われた。90年代でも、地下鉄に落書きをする犯罪者はまだ残っていたのだ。
その結果「犯罪は減り、殺人率は急減とまるで奇跡だった」と記事には書かれ、割れ窓理論を評価していた。
一方で、ニューヨークの犯罪の減少は、必ずしも割れ窓理論に基づいた運動による成果とは言えないとの批判もある。
米シカゴ大教授のスティーブン・レヴィット教授らが2006年に著した「ヤバい経済学」(東洋経済新報社刊)によると、ニューヨーク市で犯罪が減り始めたのは90年で、ジュリアーニ氏が市長となる前。しかも93年の終わりまでに、「窃盗や殺人を含む暴力犯罪は、もう20%近く減っていた」という。さらにニューヨークだけでなく全米で、90年代を通じて犯罪減だったとも指摘した。
ではなぜ凶悪犯罪が減ったのか。同書が触れたのは、90年代に米国における人口1人あたりの警官数が14%増えた点だ。任意に取り出したある街で、犯罪率が増えていないのに警官を増やした場所とそうでないところを比べると、警官が増えた街では犯罪発生率が大きく下がるという。
とはいえ、日本ではこれまでにめったに起きていない地下鉄の落書きという犯罪行為を放置しておいてよいわけではないし、「イヤな兆候」と考えられなくもない。割れ窓理論で語られたように、無関心がいずれ大きな災いを招く可能性がある以上、早期の対処が望まれる。