平昌五輪をめぐる南北融和ムードへの警戒感が強くなってきた。入場行進では南北それぞれの国旗ではなく、朝鮮半島を描いた「統一旗」を使うことが決定したが、世論調査では使用に否定的な声が上回った。
北朝鮮が約230人の応援団を送り込む意向で、注目を集めるのは確実だ。こういったことから平昌五輪が北朝鮮に「乗っ取られる」との懸念もあり、野党からは「平昌五輪を平壌五輪にしようとしている」「金正恩の偽装平和攻勢に踊らされている」といった批判も出ている。
「それぞれの国旗で」49.5% vs「統一旗で」40.5%
2017年1月17日の南北実務者協議では、開会式での南北合同入場行進と「統一旗」の使用で合意。アイスホッケー女子は南北合同チームを結成することも決まった。統一旗は00年のシドニー五輪、02年に釜山で行われたアジア競技大会、04年のアテネ五輪、06年のトリノ五輪でなどで使用され、韓国では熱狂的に歓迎された。だが、今回は様子が全く違っている。
調査会社「リアルメーター」が1月17日に行った世論調査では、「韓国選手団は太極旗(編注:韓国国旗)を、北朝鮮選手団は国旗をそれぞれ持って入場することが望ましい」との回答が49.4%で、「南北選手団がすべて統一旗を持って入場することが望ましい」との回答(40.5%)を上回った。世代別に見ると、「統一旗」支持派が多かったのは40代のみだった。
動画に韓国国旗は1回も登場しない
実際、北朝鮮側が「統一旗」の政治利用を狙っている節もうかがえる。「平壌牡丹峰編集社」を名乗る会社が運営する対外宣伝サイト「朝鮮の今日」は1月13日、「統一の道 わが民族同士」と題する宣伝動画を公開。過去の国際大会で南北が合同で「統一旗」を持って応援する様子をまとめた内容で、
「反統一勢力の介入なしに、懸案はわが民族同士で解決しよう」
といった字幕が表示される。最後は朝鮮半島の地図とともに「冬季五輪大会」「共和国創建日に」「北南関係改善」といった文字が映し出される。動画は北朝鮮国旗や統一旗は登場するが、韓国国旗は1回も登場しない。
こういったことから、朝鮮日報は動画を
「平昌冬季五輪をまるで北朝鮮主導の『平壌五輪』であるかのように誤認させるような内容だ」
と批判している。
「5000万の国民を、北朝鮮の核の人質にする誤った政策」
「平壌五輪」批判は野党からも出ている。保守系最大野党「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表は1月18日の講演で、
「地方選挙を控えて、(現政権は)平昌五輪を平壌五輪にしようとしている。金正恩の偽装平和攻勢に踊らされている」
「5000万の国民を、北朝鮮の核の人質にする誤った政策だ」
などと述べた。
「統一旗」をめぐる問題は支持率にも影を落としている。調査会社のリアルメーターが1月18日に発表した世論調査の結果によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は前週より3.5ポイント低い67.1%だった。下落は2週連続で、リアルメーターでは、仮想通貨や最低賃金引き下げをめぐる経済政策が批判を受けたことに加えて、五輪をめぐる「理念の対立」が影響したとみている。