祝い事の「お返し」に緑茶を贈ってはいけない――。テレビのバラエティ番組がそんな内容を放送した。理由は「葬式を連想させる」ためだという。
この放送後、ある老舗茶屋がツイッターで「お祝いに、お祝いのお返しにも、緑茶が使われてきた」と反論。J-CASTニュース編集部の取材に、店主は「お茶は縁起の良いものとされてきた」と強調した。一方で、番組の指摘に沿うような記載がある百貨店サイトもある。
「葬式を連想、縁起があまりよくありません」
2018年1月16日放送のバラエティ番組「この差って何ですか?」(TBS系)では、「お返しで贈っていい物と贈ってはいけない物の差」と題する内容を放送した。「お祝いのお返しに贈ってはいけない」物は、緑茶と紅茶のどちらか――。番組ではそんな質問を出演者に投げかけた。正解は緑茶で、専門家のマナー講師は
「緑茶は葬式の時に手土産として使われることが多い」
「葬式を連想してしまい、縁起があまりよくありません」
と解説。葬式前に手土産を準備する時間を取れないため、いつでも自宅にある緑茶を渡すようになったと、番組のナレーションが説明した。
この放送内容に驚いたのは、三重県四日市の老舗茶屋「お茶の川村園」の社長・川村正道さんだ。
川村さんは翌17日、同店のツイッターアカウントで「昨夜テレビバラエティー番組で、お祝いのお返しに緑茶は駄目で紅茶はOKなどということをマナーとしてご紹介されました。その理由は緑茶は葬式を連想させるとのことでした」と投稿、
「しかしながら、お祝いに、お祝いのお返しにも、緑茶が使われてきた理由もご理解いただければ幸いです」
と強調した。
川村さんはこの文章に加え、同店でよく贈答品に添付している「しおり」の写真も掲載した。そこには、こんな文章が書かれていた。
「昔からお茶は、いいことのしるしとしてお祝いごとに贈られてきました」
「茶の木の根は地中深く真直ぐに伸びてしっかり根をおろし、簡単には抜けません。婚家にしっかり根付くようにという意味がお茶にこめられ、縁起ものとして結納茶に使う習慣があります」
「個人の価値観や先入観によるものが大きい」
川村さんは1月18日のJ-CASTニュース編集部の取材に、
「以前に三重県でマナー講座を受けていますが、マナーとしてお祝いのお返しに緑茶を贈ってはいけないと、聞いたことはありません。人それぞれなのかもしれませんが...」
と答え、
「九州では結納の際にお茶が飾られる習慣があるほど、お茶は縁起の良いものとされてきました」
と強調した。
川村さんは先の投稿後も、
「お茶=葬式 を連想される方もいらっしゃいます。一方、お茶=吉兆 お茶=健康などを連想される方もいらっしゃいます」
など、ツイッターで発信を続けていた。おかげで全国から同業者含め、「わたくしは常々緑茶をお返しにしております」「とても勉強になりました!」とさまざまな反応があったという。
川村さん自身も徹底的に調べ直した結果、以下の仮説を導き出したという。
「(お祝い返しに緑茶が不適切かどうかは)地域によるものではなく、個人の価値観や先入観によるものが大きいと思います」
マナーは「立場によって諸説」
番組で解説したマナー講師は、放送の内容をどう捉えたのか。J-CASTニュース編集部が1月18日に取材すると、
「マナーは地域や歴史など立場によって諸説ありますので、一概には言えません」
と回答があった。
大手ギフト販売会社の広報担当者は、同日の取材に
「弊社では、お祝いのお返しにはお茶を避けましょう、といった案内はしていない。聞いたことがある者はいなかった」
と話した。
一方、高島屋のオンラインストアでは、「還暦お祝いでやってはいけないこと」と題する特集ページに
「お茶が好きな人は多いため、ついつい還暦お祝いの贈り物でも選びがちですが、お茶は香典返しによく使われることから還暦お祝いでは好まれません」
と明記している。