元アシスタントから残業代を請求されていた「ドラゴン桜」などで知られる漫画家の三田紀房さんが2018年1月17日、公式サイトを更新して15日に残業代を支払ったことを報告した。
残業代を請求していた元アシスタントで漫画家のカクイシシュンスケさんも17日にブログを更新し、残業代が支払われた旨を報告。請求に至った背景を振り返り、アシスタントの地位向上を目指し、「出来る限りのことをやっていこうと思います」とつづった。
「人の意識が変わっていってくれたらなと...」
漫画家のアシスタントの残業代問題は、カクイシさんが1月7日にアップしたブログで、5日に「ヤフー!ニュース」で公開された、三田さんが「アシスタントは週休3日、残業は禁止」という内容を語ったインタビュー記事に対し、「残業は今までさんざんしましたよね?」と反論したことに端を発している。
更に、三田さんが作画を外注している会社に対してはヒットに応じたインセンティブを渡す契約になっている反面、アシスタントにはそういったものは無かったことを挙げ、漫画家の立場が強いため、アシスタントの訴えは「どうとでも言いくるめられる」と考えたのではないかと主張。業界内でもアシスタントの扱いが「マシな方」の三田さんに対して残業代を請求することで、
「少しでもマンガ制作に携わる人の意識が変わっていってくれたらなと思ってこういうことをしています」
とつづっている。
これに対して複数の漫画家が反応し、うすた京介さんが
「どの職場を選ぶかも自由。そもそも漫画家なんてまともな仕事じゃないんだから嫌なら就職しなさい」
とツイートし炎上するなど、波紋が広がっていたが、今回、三田さんが残業代を支払ったことで、一応の決着となった。
「未払い残業代をお支払いしました」
三田さんは、カクイシさんが勤務していた時期に働き方についてスタッフとの話し合い、「週4日勤務(週休3日)で木曜日に原稿が完成するまで働く」をルールとして採用したと説明。
変則的な勤務体系だが、弁護士と相談したところ労働基本上問題は無く、1日10時間、週40時間までの範囲でなら残業代は発生しないと確認したという。しかし、
「この仕組みを雇用契約書や就業規則ではっきり記載しなかった」
ことを反省点として挙げ、
「変形労働時間制ではなく1日8時間勤務を前提として計算した場合に発生する未払い残業代をお支払いしました」
と、支払うに至った経緯を説明した。また、カクイシさん以外のスタッフ全員にも同様の対応をしたという。
三田さんは、残業代の請求を受けたことに最初は戸惑ったものの、「発端は私の至らなさ」「問題提起に私は感謝しています」として、カクイシさんの連載を応援するメッセージをつづった。
また、カクイシさんも1月17日のブログで支払いを受けたことを報告。漫画家はアシスタントの労働時間をよりしっかりと管理をすべきだということ、出版社はアシスタントの人件費も含んだ原稿料を漫画家に支払うべきであると再度主張した。