天才は「早指し」に強い?
だが、羽生竜王が早指しを苦手としているかといえば、そんなことはない。むしろ羽生竜王は早指しの棋戦に強いことで知られている。
早指しの代表的な棋戦に、NHK杯戦と将棋日本シリーズ、銀河戦があるが、羽生竜王は、NHK杯で過去最多の10度、将棋日本シリーズで5度、銀河戦で5度の優勝を誇る。こちらは2002年に終了したが、早指し将棋選手権でも3度の優勝経験をもつ。
そして何より、羽生竜王は朝日杯にめっぽう強い。09年以降に5度、優勝したばかりか、13年から15年まで3連覇。決勝ではいずれも、渡辺明棋王や森内俊之九段といった強豪を打ち負かした。
「ひふみん」こと加藤一二三九段(77)も、自著の「羽生善治論 『天才』とは何か」(角川oneテーマ21)で「天才の条件の一つとして、『早指し』に強いことをあげたい」と書き、早指しにおける羽生竜王の強さをこう認めた。
「勉強をしている、していないにかかわらず、早く指すことができて、しかも着手が正確で、なおかつ勝つこと──これは、間違いなく天才の共通点である。絶対だ」
「羽生さんにしても私にしても、持ち時間が与えられているから考える、というだけの話であって、最善と思われる指し手は瞬時に浮かぶ」
若さあふれる藤井四段と、前人未到の境地を開いた羽生竜王。天才どうしの「初対決」の行方やいかに――。