北朝鮮が韓国での平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックへ芸術団を派遣することで、両国が合意した。韓国メディアが「正体不明」と報じる三池淵(サムジヨン)管弦楽団(約140人)で、若手美女らを中心に構成する既存の三池淵楽団の拡大版のようなものか、との憶測も出ている。
この合意を受け、日本のワイドショーなどでは、北朝鮮の美女らで構成する音楽の芸術団を紹介するVTRが繰り返し紹介された。北朝鮮の政治的思惑などを指摘する内容もあったものの、視聴者の中にはツイッターで「(北朝鮮芸術団の)美しさをしつこくテレビで報じている。何の意味があるのか」「気味が悪いくらい必死で北朝鮮を持ち上げている」といった指摘をする人もいた。
南男北女
北朝鮮の芸術団では、金正恩・朝鮮労働党委員長が創設した牡丹峰(モランボン)楽団が有名で、最高峰とされる。ミニスカートをはいてディズニー風楽曲を披露したかと思えば、ミサイル発射の映像をバックに政治的メッセージの強い体制礼賛の歌を歌った映像が公開されている。
北朝鮮の芸術団については韓国で、特に男性に関心が高いとされ、2018年1月16日の情報番組「モーニングショー」(テレビ朝日系)に出演したコリア・レポート編集長の辺真一氏は、「昔から南男北女と言いまして、(日本でいう)東男に京女みたいに...」と、美女は北朝鮮に多いとされていると説明し、最近では、韓国女性の間では整形が流行ったが、北朝鮮の女性は(整形などせず)ピュアだ、という認識が高まり、関心をもたれているという。
こうした「美女」をキーワードとする北朝鮮の芸術団について、合意翌日の16日の民放各局は、朝から昼過ぎにかけてのワイドショーを中心に、牡丹峰楽団や三池淵楽団の映像を軸に、何度も繰り返し紹介していた。
楽団の演奏や歌唱の映像は、音声や字幕つきで紹介される場合や、音声はスタジオ陣の議論で背景の映像として流される場合などがあった。字幕では「偉大なる金正恩同志 私たちはあなたしか知らない」「我々の誇り 火星砲(編注:ミサイル)が火柱を吹く」といった表示があった。演奏の背景に流れるミサイル発射の映像も、よく使われていた。
民放主要各局の16日の放送をみると、楽団の映像は、数秒の紹介から2分近いものまであり、ワイドショーでは、スタジオ陣の討議の合間に細切れに何度も紹介されていた。
「何の意味があるのかな」
視聴者の中には繰り返しの映像紹介に疑問を感じた人もいたようで、16日のツイッターには、
「北朝鮮のモランボン楽団の美しさをしつこくテレビが報じている。何の意味があるのかな」
「こんな情勢の中、美女軍団がどうだとか(略)気味が悪いくらい必死で北朝鮮を持ち上げ(略)」
「日本のTVも北の美女軍団なんかにスポット当てたニュース、何だかおかしくない!?」
といった指摘が寄せられていた。
各局のワイドショーとニュース番組で、芸術団派遣合意を話題にした延べ時間は相当なものにのぼりそうだが、J-CASTニュース編集部が、録画機能を使って「芸術団の演奏場面」を中心とする「北朝鮮の美女(軍団)」の動画を(画面の半分以上を使って)放送している時間(東京放送分)を大まかに計算した(詳細は文末の「編集部注」)。
延べ時間はTBS系約37分、テレビ朝日系14分強、フジテレビ系約13分半、日本テレビ系12分弱だった。数秒から十数秒、中には2分近い紹介などが細切れであり、番組を見ていた人の中には「もっと長時間、映像を見せられた気がする」という印象をもつ人もいるかもしれない。たとえば、朝のワイドショーの中には、回数では24回も紹介した番組もあった。
<編集部注>計測は、録画機を使い、表記される放送時間を秒数単位で確認し、総計した。個別の場面の秒数を単純に足しているため、実際の延べ時間とは異なる場合があります。あくまで参考値です。対象は、早朝5時以降に始まる番組から、24時までに始まるまでの情報番組とニュース番組。