神奈川県西部と横浜を結ぶ相模鉄道(相鉄)が2018年1月17日、都内乗り入れに向けた新駅の建設現場と新型車両を報道陣にお披露目した。
相鉄は首都圏の大手私鉄の中では唯一都内に乗り入れておらず、現時点では「離れ小島で閉ざされた路線」(相鉄・滝沢秀之社長)。都内乗り入れで文字通り「相模の鉄道」から脱して知名度を上げ、沿線人口の増加を目指す。
JR、東急の順で乗り入れる計画
都心への乗り入れは2段階で進む。まずは相鉄の西谷駅(横浜市保土ケ谷区)とJR東海道貨物線横浜羽沢駅(同神奈川区)付近を2.7キロの連絡線で結ぶ。海老名を出発した相鉄の電車は、連絡線から横須賀線に入り、「湘南新宿ライン」のルートでもある武蔵小杉から、都内の大崎、渋谷を経て新宿方面に乗り入れる。19年度下期の開業を目指している。
次の段階が東急への乗り入れ。やはりJR横浜羽沢駅付近から、東急東横線と目黒線が乗り入れている日吉駅(同港北区)まで約10キロにわたって連絡線を建設。22年度下期の開業後は田園調布を経て渋谷(東横線)や目黒(目黒線)に乗り入れる。
ローカル線によくある「あのボタン」も...
今回お披露目されたのは、東急乗り入れ用の「20000系」。相鉄が新型車両を導入するのは07年の11000系以来9年ぶりで、16年に登場した「9000系」リニューアル車に続いて、横浜の海をイメージした色「YOKOHAMA NAVYBLUE」(ヨコハマネイビーブルー)に塗装。内装は天井を高くしたり荷棚をガラス製にしたりして、開放感を演出した。
優先席の一部は座る面を9センチ高く、5.3センチ浅くして、立ったり座ったりしやすくした。神奈川県央部の「夏は暑く、冬は寒い」気候から、ローカル線によくみられるドアの開閉ボタンもつけた。
相鉄とJRの車両の仕組みはほぼ同じだが、東急に乗り入れるためには、相鉄のみを走る車両よりも幅を20センチ小さくする必要がある。車両前面の貫通扉も必要だ。そのため、先に東急乗り入れ用の20000系の開発を進め、2月11日から運行を始める。JR乗り入れ用の車両も別途開発が進んでいる。
新駅のホーム部分は「コンクリートむき出し」、まだ線路がない部分も
相鉄の滝沢秀之社長は、
「このまま何もしなくても、生産年齢人口が減っていく。離れ小島で閉ざされた路線だと限界がある」
「残念ながら、まだまだ知名度が低いという調査結果が出ている」
などと厳しい現状認識を示しながら、都心への乗り入れを機に沿線の人口増につなげたい考えだ。
「こういった特徴ある車両を投入することで、まず知っていただくことを考えている。その先に『相鉄沿線にはこんなことがある』と発信し、沿線に住みやすい、仕事しやすいことをアピールしていきたい」
都内乗り入れのための連絡線は地下に建設され、途中には羽沢横浜国大、新横浜、新綱島の3駅が建設される。この日は羽沢横浜国大駅の状況が報道陣に公開された。地上部分の建物はレンガ調のタイルが貼り付けられるなど外装工事が進行していた。地下のホーム部分は、トンネル自体は完成しているものの、内装工事はこれから。壁や床はコンクリートがむき出しの状態で、レールもまだ敷かれていない部分があった。連絡線と同じ19年度下期の開業予定だ。