「かち上げ」封印で注目されている横綱・白鵬(32)は2018年初場所の3日目に黒星がついた。
場所前に横綱審議委員会から「張り差し」「かち上げ」を控えるよう言われていたため、今場所はここまでの3番でいずれも封印、不安定な相撲が続いていた。32歳の白鵬は衰えも指摘されており、インターネット上では「横綱相撲で勝てないのなら引退だろ」といった声が早くも出始めた。
「かち上げというより『肘打ち』のイメージが強いから非難される」
初場所3日目の2018年1月16日、白鵬は立ち合いで右を差しにいったが、北勝富士は脇をしっかり締めて入れさせない。頭から真っ直ぐぶつかられ、はたきに行った白鵬だが、一歩引いた隙を北勝富士が見逃さず一気に押し出し、白鵬はあっけなく土俵を割った。過去2戦2勝の相手に金星を献上した。
横審の北村正任委員長は17年12月の会見で、白鵬のかち上げ・張り差しといった立ち合いを批判する投書が相当数あったとダメ出しした。「横綱相撲とは言えない」「見たくない」といった意見が多かったという。その後、1月5日の稽古総見でも張り差しを見舞う1番があり、いっそう白鵬の取り口に厳しい視線が注がれることとなった。
今場所初日の小結・阿武咲(21)戦。立ち合いで真っ直ぐ当たると、押し込んだのは阿武咲だった。まわしを取れなかった白鵬は、土俵際で阿武咲の出足をいなして突き落としたものの、薄氷の勝利だった。
2日目の前頭筆頭・逸ノ城(24)相手には右の前三つから寄り切ったが、その直前、左上手から上手出し投げを図るも巨体の逸ノ城のバランスを崩せなかった。
そうした苦戦続きのなかで迎えた3日目・北勝富士戦だった。
17日付の日刊スポーツでは、高砂親方(62=元大関・朝潮)が「(張り手やかち上げを)封印されたことで、左上手を取りに行くか、先に右を差しに行くのか選択は限られてしまう。北勝富士戦は胸で当たってから左に動き、安易に上手を取りに行ったが、当たりの強い相手には通じない」と今の戦術の限界を指摘している。
かち上げ封印で戦法が限られるうえ力の衰えも
そもそも相撲の「かち上げ」は、腕を曲げて相手の胸に当てる技とされる。相手の出足を止め、その隙にまわしを取ったりするためのものだ。ところが、白鵬の「かち上げ」は肘を相手の顔面に当てることが多く、格闘技の「ひじ打ち」と同じだと言われてきた。
過去、取り口で相手を流血させ特に物議を醸したことがある。15年五月場所では、前頭3枚目・佐田の海(当時)相手に張り差しからかち上げを繰り出し、鼻血が出た。
16年三月場所では関脇・嘉風(当時)に立ち合いからかち上げを連発。出血した嘉風は顔や体に血が滴り、白鵬にも血飛沫がついた。
親方衆からも強烈な苦言が出た。今場所3日目にNHK中継で解説した境川親方(55=元小結・両国)は、
「本来ちゃんとしたルールに則って、体当たりで相手を起こすのがかち上げです。白鵬が非難されるのは、張って相手の顔を制止しピンポイントに肘で狙っていくでしょう。かち上げというより『肘打ち』のイメージが強いから非難されると思うんですよ」
と直言。
「何も肘打ちみたいなね、見ていて良いものじゃないですよね。本人はかち上げと思っているんでしょうけど、本来のかち上げとは程遠いと思うんですよ。直すべきところは直さないといかんでしょうし」
と自省を促した。
一方で境川親方は、「この横綱は右四つの形もしっかりしているし、踏み込んで突っ張りも持っていますから、そういう相撲を取っていけば(よい)」と期待している。
しかし、年齢的にも力の衰えが指摘され続けている白鵬。四つ相撲で勝ち続けていくには、高砂親方の指摘にもあるように、戦法が限られ相手に立ち合いも読まれてしまう。さらに全盛期の力が落ちているとすると、今後、横綱を張っていくのはかなり厳しいともいえる。
ツイッターでは黒星の白鵬が冷水を浴びせられており、
「既にカチ上げもどきのエルボー、張り手で相手の出足を止めないと若い力士の圧力を受け止める力は無くなっていたのでは?今年中に引退でしょう」
「横綱相撲で勝てないのなら引退だろ。何やっても勝てばいいって考えなら、自ら大関に戻ればいい」
「まあ白鵬だいぶ衰えてるしかち上げはちょっとアレにしても張り手ぐらいは許したってくれって感じもなくはない。でも張り手使わざるをえんまでに来たら引退するのが横綱の引き際の美学やろって言われるしなー」
などといった声が漏れた。
ただ一方で、「色んな批判があってその中には確かにここはなぁって思うところもあるけど 白鵬が引退したらやっぱり相撲界は寂しくなると思うし白鵬の代わりに土俵を締められる力士が今の幕内にいるかって言われたら疑問符しか浮かばない」との声もある。