新たな「社会保障と税の一体改革」、実現の見通しは...
「補正予算という『抜け穴』」(朝日)も多くが指摘する。例えば今回の予算案で、農地や水路を整備する土地改良予算は328億円増の4348億円だが、2017年度補正予算案とあわせると5800億円と、自民党が下野する前の水準に戻っている。「補正予算の財源を手当てするため、国債を追加発行する。これでは当初予算で新規国債の発行減を誇っても、意味が無いばかりか、かえって危うい」(朝日)、「当初予算で国債発行額を抑え込んでも、補正予算で再び増発するならば、財政健全化は進まない」(日経)、「当初予算の編成時から補正予算を前提とするような財政運営は、再検討すべきではないか」(読売)など、当然の主張だろう。
安倍政権は財政の基礎的収支(プライマリーバランス=PB)の2020年度黒字化の公約を撤回し、新たな財政再建目標を、18年6月をめどに策定する方針で、これについても各紙言及しているが、「今のような姿勢で立て直しへの道筋を示せるのか。不安がぬぐえない」(朝日)という不安感、「社会保障の制度改革も含め財政赤字の構造に切り込んだしっかりした案をつくり、PBの黒字化を確実に実現してほしい」(日経)、「税収増ばかりに頼るのではなく、腰を据えた歳出入改革を打ち出してもらいたい」(産経)という方向性は各紙にほぼ共通している。具体的に、「社会保障制度と、それを支える税の将来像を一体として考え、そのための具体的な工程表を示すことが重要な課題となる」(読売)、「財政を持続可能とするためには社会保障と税の新たな一体改革に早急に着手することだ」(東京)というように、新たな「社会保障と税の一体改革」が必要というのが、新聞論調的にはほぼ共通認識だ。ただ、経済成長重視で財政拡大論も根強い安倍政権だけに、自身の政策の選択肢が狭められる「一体改革」に取り組む可能性は低いという悲観論が大勢だ。