日本政府は「緊張を高める行為」などとして中国側に厳重抗議したが、中国側は領有権を主張し、抗議を受け入れなかった。これは「いつも通り」の流れだが、有力中国メディアのひとつは、領有権の主張は曲げないものの、日本側が実効支配していることは認めるなど、従来と比べて抑制的な論調を展開した。
日本側の行動は「領土主権守る固い決意を揺るがすことできない」
防衛省の発表によると、潜水艦と中国海軍のフリゲート艦が2018年1月11日、沖縄県の尖閣諸島の大正島周辺の接続水域内を通過した。中国軍艦がこの水域を通過するのは16年6月に続いて2回目で、潜水艦は初めて。1月11日時点で防衛省は潜水艦の国籍を明らかにしていないが、中国海軍に所属している可能性がある。今回の事案では領海侵犯は確認されておらず、接続水域を航行すること自体は国際法上問題ないが、菅義偉官房長官は1月11日の会見で、中国側の動きを
「緊張を高める行為で、我が国として深刻に懸念する」
と非難。中国側に抗議したことも明らかにした。
中国外務省の陸慷報道局長は、海上自衛隊の艦艇が先に水域に入ったとして、
「中国海軍が日本側の艦艇の活動を監視・追跡していた」
と主張。
「日本側の行動は、釣魚島が中国に属するという確立された事実を変えることも、釣魚島の領土主権を守る固い決意を揺るがすこともできない」
などと従来どおり尖閣諸島の領有権を主張しながら、
「中国側は日本側に対して、釣魚島(尖閣諸島の中国側の呼称)問題で面倒を起こすのを止めるように求める」
とした。中国政府の主張と一線を画しているのが中国共産党系の環球時報が1月11日にウェブサイトに掲載した社説。対日批判が多い同紙にしては抑制的な内容だ。
「日本にはもっと冷静になってほしい」
「島の周辺海域にいる(日中)双方の船が、お互いに海域を離れるように求めるのは普通のことだ」
だとして、現状について
「実際のところ、釣魚島は日本が実効支配しているが、中国海警の船舶は周辺海域を定期的にパトロールしている。(日中)双方の軍艦は対決を避けるために互いに離れた場所に留まることが多く、釣魚島周辺海域を一時的に通過することもある」
などと説明。中国メディアが日本側に実行支配を認めるのは異例だが、
「日本政府は事件を作り上げ、摩擦をエスカレートさせようとして政府とメディアが手を組んで中国を批判させるなど、攻撃的にふるまっている」
とも言及。現状変更を試みているのは日本側だと主張した。
社説では日中関係に雪解けの兆しがあるとしながらも、日本側が国内世論を背景に、融和的な動きと敵対的な動きとの間で「煮え切らない状態」だとも指摘。その上で、日本側に「騒ぐな」と言わんばかりの主張を展開した。
「日本にはもっと冷静になってほしい。どういった関係を中国と発展させたいか、どういったやり方で両国間の摩擦に対応すべきか、を考える必要がある。中国は他の隣国との、さらに大きな領土をめぐる紛争にも対応してきたが、日本ほど威張り散らした国はない。もし日本が熟考するのではあれば、中日関係はさらに着実に改善されるだろう」